幕末江戸と外国人 吉﨑雅規 同成社江戸時代史叢書 ISBN978-4-88621-848-3 2,200円 2020年8月
明治維新前、日本にやってきた外交官（アメリカのハリスたち）と幕府のせめぎ合い。 当初は横浜近辺に押し込められていた外交官たちが、より江戸城に近いところにいまでいう大使館を設置したいと、あまり当事者能力がなくなっている幕府に圧力をかけて、品川近辺の大寺院（ハリス（米）は少し離れた麻布善福寺）を確保する。大寺院なら広いし、それなりの格式もあるので、外国の外交官たちのメンツもたつ。
だが、こうした江戸内に住むことができるようになった外国人たちは、町中で、つまり飲食店や遊郭で酔っ払って（酔った勢いで出かける？）騒ぐ行為も起こるようになる。また、好奇心旺盛な江戸っ子は、外国人を見学に出かけたりもする。また、明治維新前から散切り頭や服装などの洋装も始まったという。これは意外だった。川路聖謨も孫が散切り頭になったのを嘆いている。
当時はもちろん攘夷を旨とする武士も多く、外交官たちはそうした面についても幕府に警備を要求する。警備要員の供出を求められた諸藩の侍の中には攘夷派もいたし、また財政面での負担も大きかったようだ。次第に幕府直属の別手組（部屋住みの就職口、でも幕末混乱期の戦闘要員にもなる）に変わっていく。また、長州などでの圧倒的武力の差を見せつけられて、攘夷の雰囲気も衰えていく。
長崎商館長（カピタン）たちは、江戸訪問のときの最大の脅威を火事としていたが、この辺はどうだったのだろう。安政江戸地震（1855年）のような地震＆大火のときの外国人たちは？
この本では、江戸時代－明治時代で不連続的に洋風化したのではなく、江戸時代末期からじわじわと洋風化が進んできたことが強調されている。添付されている絵も興味深い（もっとたくさんほしいところ）。
※ 目次は裏表紙の帯を参照。
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2021年1月記