悪党たちの大英帝国

悪党たちの大英帝国 君塚直隆 新潮選書 ISBN978-4-10-606858-7 1,400円 2020年8月


 筆者は「科学的実証」が主流になっている歴史学界のニッチを狙い、「個人」に焦点を当てた歴史を描こうとしているようだ。この本もその一環。ただ、表題とは大きく違う印象、つまり登場人物が「悪党」になっていない、筆者の登場人物に対する「愛」があふれ出てしまっている。「悪党」という評価は、筆者のものではなく、当時の政敵などのもの(政敵にとって相手は悪党であることは当たり前)を紹介するだけ。


※ 登場人物(目次)は裏表紙の帯を参照。


 ロイド・ジョージなどは、現在のイギリスの社会保証制度を築いたわけだし、ボーア戦争にも反対した人だし。まあ、公然と愛人と生活していたことが“悪”であることくらい。貴族身分を売っていたことも、政治資金獲得のためのマヌーバーという評価もできるし。


 「一流の政治影はないが、〜略〜、公衆の偏見や感情にうったえることによって、〜略〜、無恥で厚かましいので、〜略〜、心底から浮薄で、徹底的に冷淡で、〜略〜、問題が解決できないときは、それをたくみにもてあそぶ。」って、どこかの大統領(にしがみついている人)のことか。そもそも誰の言葉か

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2021年1月記

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