アイヌと神々の物語

アイヌと神々の物語 萱野茂 ヤマケイ文庫 ISBN978-4-635-0478-1 1,100円 2020年4月(1988年「カムイユッカラと昔話」(小学館)の抄録)

 アイヌの男に欠かせない条件は、もちろん狩りの技術、それに雄弁、もう人は度胸。度胸は自分でつけるしかないが、前の二つは父などから伝えられていく。

 狩りの技術は当たり前に必要。では雄弁は。アイヌの神々は人に近く、子供が川で溺れたり、木から落ちて怪我をしたりすれば、それは川の神や木の神が子供守らなかったせいだとして、神々をしかりつけるときに必要なものだからだ。さらに神々は見目麗しい若い男女に恋したり、さらには人妻に横恋慕したりもする。こうしたとき、人と神では結婚できないので、神はその相手を殺して魂を神の国に連れて行こうとする。こうしたときこそ、雄弁の力が発揮され、その非道を非難し、理を説得するときに雄弁の力が発揮され、一度は死んだ人間も生き返ることができる。

 雄弁とは少し違うが、ユッカラ(ユーカラ)を話すことができる人は少なく、そうした人たちは尊重されたようだ。

 シサム(倭人)が出てくる話もあるが、よいシサムと悪いシサムもいるという当たり前の登場、貧乏なシサムには同情的。シサムの生活に一種の憧れもあったような話も出てくる。 この本では古老から聞き取った話一つ一つに萱野氏が解説を加え、また話に出てくる道具の図とその説明もある。

 全体で540ページの大部の本

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2020年6月記

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