山小屋ガールの癒やされない日々

山小屋ガールの癒やされない日々 吉玉サキ 平凡社 IABN978-4-582-83807-7 1,400円 2019年6月(2019年7月第2刷)
 これは山に登る“山ガール”ではなく、山小屋で働いていた“山小屋ガール”(現在はWebライター)が当時を振り返って書いたエッセイ集。

 山小屋は利用者側からしか知らないが、でも山小屋側から見るとたぶんこうなんだろうなぁということが書いてある。歩荷とか道直しとかが、山小屋スタッフの間では人気の業務だとは初めて知った。とても過酷な労働なのに。

 あと、「マウンテンでマウンティングですか」の節にあるように、ほんといます、自慢する人。こちらも年なのでそれほどの害はもうあまり受けないが、筆者のような若い女性はよくターゲットになるのだと思う。でも一度、脈絡なく怒られた(お説教された)ことがある。浅間山の外輪山である黒斑山で珍しく三脚を立てて浅間山を撮っていたら、いきなり「あんた、そんな柔な三脚じゃダメですよ。私なんか三脚だけで4キロもするんだから。」といわれた。こちらは、このあと草すべりの急降下をカルデラの底まで下り、Jバンドから外輪山に登り返して戻ってこようと思っているのに、自分の体力を考えたら三脚だけで4kgの荷物はとても背負えない、いろいろなスタイルがあるんだから放っておいて欲しいと思った。

 「癒やされない日々」は別に山小屋の仕事が嫌だったということではなく、毎日大自然に癒やされていいわねぇとかいわれたり、癒やされるために山小屋の仕事をしたのとか聞かれたりするので、そうではないという意味。全体に、気楽に楽しく読める本。山小屋の見方が変わるかもしれない。

〔もくじ〕
プロローグ 人生を変えた山小屋との出会い

COLUMN 山小屋って何?
COLUMN よくある質問

第一章 山小屋生活ってどんなもの?
仕事ができない私はポンコツ?
一〇〇人前のごはんを作ってました
まかない作りは闘いだ!
地獄のヘリ待機
山で水をムダにすると……
チヤホヤされる業務「歩荷」
小屋ガールの休日
冬の間は何をしているの?
季節労働は将来が不安?

第二章 大自然に……癒されない!
山小屋バイトは自然に癒される?
週三回のお風呂をパスしたくなる理由
泣き場所を探した日
小屋ガールだってオシャレしたい!
山でのお酒はほどほどに
クマ vs 雷親父
道直しは人気の業務?
山の荒天は凄まじい!
「小屋閉め」はやりたい放題!?

第三章 心に残るあの人
常連さんとスタッフのゆるい絆
遭対協隊員の思い
山小屋の人がお客さんを叱る理由
山小屋で起きた奇妙な話
マウンテンでマウンティングですか?
山の事故で亡くなった方を責めないでほしい

第四章 濃すぎる人間関係!
住み込みバイトの人間関係は運まかせ?
一緒に暮らしてたって分からないことはある
おじさんスタッフ列伝
勝手なカテゴライズにモヤモヤ
「この中で誰が好み」禁止令
オザケンとバニラティー
下山は、寂しい

エピローグ 仲間に背中を押されて

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2019年7月記

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