霊長類

霊長類 井田徹治 岩波新書 ISBN978-4-00-431662-6 1,020円 2017年5月

 これは霊長類の解説書ではなく、霊長類が現在置かれている状況を現地に出向いて取材した、その記録。筆者は共同通信社の科学記者(現在は編集委員)。ほとんどの霊長類が絶滅の危機に追いやられている。もちろんその原因は霊長類の一員でもある人類。
 人類のこれまでの生物ではあり得なかった地球全体への拡散、さらに産業革命以後はかつては人類もそこの住人だった森林の大規模伐採により住みかを失っているヒトを除く霊長類。森林の伐採→農耕地の拡大は、大資本によるものではあるが、それに依拠して生きなくてはならない大勢の貧しい人たちがいるという現実。つまり、こうした経済状況が根本にあって、貧富の問題・格差の問題はテロの背景でもある。エコツアーだけでは、解決は難しいと思う。

 ボルネオ(マレーシア領)で、テングザルたち霊長類やその他の野生動物を見るリバークルーズに参加したことがある。リバークルーズで野生動物に遭遇できる可能性が高いのは、川の周囲の熱帯雨林〔ジャングル)だけが保護されているからだ。つまり、幅数十メートルの薄いジャングルの外はパームヤシのプランテーションになっていた。野生動物はこの狭い範囲でしか生きていけなくなっている、だから動物を見るツアーが成り立っているという哀しい現実

目次
はじめに

第1章 霊長類に迫る危機
 【コラム】 霊長類とは

第2章 大型類人猿の森――ルワンダ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国
 第1節 山に暮らすゴリラ
 【コラム】 山極寿一とダイアン
 第2節 低地のゴリラ
 第3節 湿地のゴリラ

第3章 ヒトとの共生――コンゴ民主共和国、タンザニア、マダガスカル
 第1節 森の平和主義者 ボノボ
 【コラム】 ボノボ・果物をおすそ分け
 第2節 湖岸の類人猿 チンパンジー
 第3節 キツネザルの楽園

第4章 アジアの多様な霊長類――ボルネオ島、ベトナム
 第1節 森の人 オランウータン
 【コラム】 リーキーの天使たち
 第2節 追い詰められる小型霊長類 メガネザル・スローロリス
 第3節 観光ブームの裏で ラングール・テナガザル

第5章 残された聖地――アマゾン
 第1節 知られざる森のサル ウアカリ
 第2節 森の体操選手 ムリキ
 第3節 絶滅の淵から タマリン
 第4節 帰れないサルたち
 【コラム】 新たな群れ発見の最新報告

終 章 つながる世界
 第1節 続く脅威、新たな懸念
 第2節 霊長類を守る

謝 辞
参考文献

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2019年5月記

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