日本鉄道史 昭和戦後・平成編

日本鉄道史 昭和戦後・平成編 老川慶喜 中公新書
ISBN978-4-12-102530-2 940円 2019年2月

 1949年にGHQと政府の綱引きの結果できた国鉄、そういえば三公社五現業という言葉もあった(国鉄は公社)。そして、1987年の分割民営化(赤字対策と同時に組合つぶしの意味も大きかった)、つまり国鉄の歴史は38年しかなかったのか。民営化してももう32年。民営化といっても、JR東日本やJR東海のように儲かっているところもあるが、JR北海道のように営業努力だけでは経営は難しいところもある。立地条件が違いすぎる。

 現在の新幹線(最初は東海道新幹線)を広軌(標準軌)にするか、在来線のような狭軌にするかは、結構、総裁十河信二(そごうしんじ)や、新幹線に後ろ向きだった当時の技師長藤井松太郎を(事実上)更迭して後釜に据えた島秀雄(戦前の広軌論者島安次郎の息子)の力が大きかったという。また、広軌にした方が、当然狭軌より高速、輸送力も大であるばかりか、総合的な建設費も安くできたという。湘南電車で成功した電車方式(機関車方式でなく)よかった。

 淡々と日本の鉄道史を述べてきた筆者だが、最後のリニア中央新幹線のところだけ、非常に厳しい意見を書いている。これについては、リニアは当然旅客だけだろうから、少し余裕ができた分、現在の新幹線で貨物電車を走らせたらどうだろう。もともと、新幹線でも貨物を運ぶ計画もあったようだし(添付した図のような無蓋車は無理だろうけど)、博多〜東京、東京〜函館(札幌)をトラックよりも高速で運べるので、利用価値は出ると思う。まあ、線路の耐加重設計などの問題もあるのだろうが。

 いずれにしても、同じ筆者による幕末・明治篇、大正・昭和戦前篇もそのうち読んでみようと思う。

目次
第1章 敗戦直後の戦争
第2章 日本国有鉄道の成立
第3章 高度経済成長期の鉄道
第4章 高速鉄道時代の幕開け
第5章 暮らしの中の鉄道
第6章 国鉄の解体
第7章 JR体制下の鉄道
あとがき
主要参考文献
略年表

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新幹線を走る貨物電車の予想図(「日本の鉄道」(朝日新聞社編、昭和35年(1960年)10月)より。)

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2019年4月記

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