系外惑星と太陽系 井田茂 岩波新書 ISBN978-4-00-431648-0 820円 2017年2月
1995年に太陽系以外の惑星(系外惑星)が発見されたのをきっかけに、続々と系外惑星(系)が発見され続けている。
ホット・ジュピター(軌道半径が小さい巨大惑星)、エキセントリック・ジュピター(軌道の離心率が大きい巨大惑星)、ホット・スーパーアースあるいはホット・ネプチューン(軌道半径の小さい岩石or氷惑星)など、太陽系の惑星の姿からは考えられないものが多い。
太陽系形成については「標準理論」というものがほぼできあがっていたのに、じつは我々の太陽系は全然“標準”ではないということがわかってしまったのだ。つまり「標準理論」ではほかの惑星系の説明にはなっていないことが明らかになったしまったのだ。言葉を換えると、地球中心の地動説が否定されて、さらに地球がそのまわりを回っている太陽すらもまったく銀河系の中心から離れた場所を回る平凡な恒星、そして銀河系ですら平凡な銀河という事がわかってきたのと同じ事が、惑星系でも起きていることになる。太陽系は様々な形がある惑星系の形の一つにしか過ぎないことがわかってきたということだ。太陽系中心主義は意味がないことになった。
筆者はこの本で、この混乱した状況を整理しようとしている。つまり、系外惑星についてとか、どの惑星系についても応用できる一般的な惑星の形成理論を説明しているものではない。「よくわかる云々」本ではないが、逆にこれから地球惑星科学を目指す人にはいいと思う。
なお、この本が発行された2017年2月にはトラピスト惑星系が発見されている。つまり、ハビタブル・ゾーン(惑星表面に水が液体として存在できる恒星からの位置、近すぎれば暑すぎる、遠すぎれば寒すぎる、ちょうどよい範囲、太陽系では金星〜火星程度)に、ほぼ地球型(金属の核と岩石のマントルという構造)の惑星が、それも複数存在していることが明らかになった。当然この本には間に合っていない。ただ、ハビタブル・ゾーンに地球型惑星があったとしても、それが「第2の地球」かどうか、まったく異なる姿をしている(想像を絶した姿をしている)可能性が高いと思う。
目次
はじめに――天空と私、そして地球中心主義からの解放
第1章 銀河系に惑星は充満している
1 惑星系は普遍的な存在である
2 系外惑星をどうやって見つけるのか
3 系外惑星の姿
第2章 太陽系の形成は必然だったか
1 美しい古典的標準モデル
2 円盤から始まった
3 寡占成長モデルの成功と微惑星形成問題
4 巨大衝突モデルの成功と暗雲
5 木星型・海王星型惑星の形成問題
第3章 系外惑星系はなぜ多様な姿をしているのか
1 異形の巨大ガス惑星のできかた
2 スーパーアースが示すもの
3 太陽系をふり返る
第4章 地球とは何か?
1 地球の構成物質
2 地球は「水の惑星」ではない
3 地球の内部構造
4 地球の表層環境
第5章 系外ハビタブル惑星
1 難しい「ハビタブル条件」
2 地球たち
3 巨大ガス惑星の衛星たち
4 赤い太陽の異界ハビタブル惑星
終 章 惑星から見た、銀河から生命へ
おわりに
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2019年5月記