数の女王 川添愛 東京書籍 ISBN987-4-487-81235-0 1,600円 2019年7月
「数学は科学の女王であり、数論は数学の女王である。」と言ったのは、あのガウス(1777年〜1855年)らしいです。この本はその数論をネタにした小説です。
各自が“運命の数”を持っている世界、憎い相手の“運命の数”を知ることができれば、その相手を呪い殺すことも可能な世界が舞台。そこに君臨する女王は自分の運命の数464052305161が巨大な素数だと思い込み(実際は4261,8521,12781という約数を持つ)、すなわち特別な存在と思い込み、さらに“影”によってそそのかされて<不老神の数>、さらには<不滅神の数>を手に入れようと、冷酷な殺戮(相手の運命の数を知って呪い殺す、相手を飲み込む喰数霊を操る、ただし戻ってきた喰数霊によって傷つけられる、その傷を治すのが城で栽培しているフィボナッチ草から作った薬)を繰り返す。
この女王に対して起ち上がるのは、冷酷な目的のためだけで養女にされていたナジャ、女王の本当の娘だが心優しい、ナジャの姉(ナジャとは血は繋がっていない)でもあるビアンカ、じつは女王の妹である(ビアンカの叔母)楽園の長(おさ)、城の衛兵隊長だったトライア(“影”に対抗できる不思議な力を持つタラゴン一族の末裔で女性)、そして一時は鏡の中に閉じ込められて女王から呪うべき相手の運命数のを見つける過酷な仕事に従事させられていた妖精たち、また謎の女性ビアンカ(城の薬草畑と蜜蜂小屋の管理人)も。最終的な敵は“影”
もちろん女王の対抗勢力は、最終的には勝利する。その方法は? また女王が受ける「寛容で過酷な裁き」とは?
出てくるのは約数・素数・合成数、素因数分解と約数の見つけ方、過剰数・不足数・完全数、友愛数、フィボナッチ数列とリュカ数列、フェルマーの小定理(素数判定の一方法)、擬素数、カーマイケル数(フェルマーの小定理にはかからない合成数、女王の運命の数など)、素数を生成する式、カプレカ数、三角数、巡回数、メルセンヌ数・メルセンヌ素数、ピタゴラス素数、コラッツの予想(まだ証明されていないそうです)など。本文中では違う用語(素数が素の数、フェルマーの小定理が小フェルマー神の判定など)で出てくることもある。後ろに用語の説明も出ているし、本文中に解説がある場合も多く、さらにナジャが証明をしてしまうものもある。
いわば、全体が数論のお遊びとなっている本です
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2019年11月記