漢書・後漢書・三国志列伝選

漢書・後漢書・三国志列伝選 本田済訳 平凡社中国古典文学大系13 昭和43(1968年)年6月(昭和48年(1973年)9月初版第4刷) 1,700円

 司馬遷の史記の古代王朝から漢の武帝後の歴史書である、漢書、後漢書、さらには三国志の中の列伝(歴史上の個人の話)を選び、まとめたもの。

 学問や才能を認められて宮仕えして栄達を得ても、些細な讒言でたちまち陥れられる人たち。こうも簡単に讒言を信じてしまう皇帝の元では、とても仕事はできないと思うが、それでも仕官する人たちが絶えない不思議。当然、徹底的に任官を避けて隠棲する人たちもいる。

 もと蜀の官僚、のちに魏に使えた陳寿の三国志、魏の正当性を書いているので(この本は列伝選なので魏史の中の倭人伝はない)、ここでは魏の列伝が当然トップ、でも蜀や呉の人たちもそれなりに描いている。もちろん三国志は三国志演義のもととなったものだが、当然曹操の悪口や悪行(危うく逃げたときにかくまってくれた一家を疑って殺してしまったことなど)は書いていない(後の人の補注にある)。でも、文人としての曹操や少し優柔不断なところがある、また頭痛持ちだったという曹操の人間的な一面も書かれていない。

 諸葛孔明もそれほど万能の知略家とは書かれていない。劉備の記述もあっさり、子供の劉禅についてはほとんど書いていない。関羽や張飛についても簡潔。呉の周瑜や呂蒙の方が詳しいくらい。よくこれだけで、あの三国志演義まで膨らむものだと感心する。もちろん、いわゆる判官贔屓で庶民の同情とそれを汲んだ講釈師たちが枝葉を付け加えたものを、羅貫中がきれいにまとめたのだろう。

 

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2019年8月記

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