家畜化という進化

家畜化という進化 リチャード・C・フランシス 西尾香苗訳 白揚社 ISBN978-4-8269-0212-0 3,500円 2019年9月

 従順な性質を持つ個体から家畜化が始まるのだが、同時に毛の色・長さの多様化、垂れ耳・巻き尾、季節によらない繁殖、小型化(齧歯類(モルモット)は大型化)などの変化も伴うという。

 第1章のキツネの家畜化に取り組んだのは、ルイセンコ−スターリンににらまれ、シベリアに飛ばされたメンデル遺伝学支持のベリャーエフだという。モスクワから遠い地に飛ばされたおかげです、少しは自由な研究ができたそうだ。上に書いた毛色などの多様性ができるということが、キツネの家畜化実験で家畜化とセットだと主張し始めた。

 一般読者を対象とした軽妙な語り口だが、ゲノム(DNA)解析についても説明していて内容は高度だ。また、筆者がアメリカ人のためか、たぶん創造論(インテリジェント・デザイン論)を意識しているようで、進化はある程度行き当たりばったり、過去の遺産を引きずっていて、そのときに利用できるものを使っているだけ、とても最初からきちんと設計できているわけではなく、無駄が多いということを繰り返していっている。

 あと家畜化に伴う脳の萎縮については、萎縮している部分は主に嗅覚や聴力などの部分ともいっている。

 で、ヒトの進化は章に渡って取り上げている。そのうち第13章は生物としてのヒトの進化の流れの解説、第14章がヒトの社会姓についての議論であり、筆者はヒトの自己家畜化については慎重なようだ。

 最後に、地質年代区分として、完新世のあと、人類の農耕革命以後を「人新世(アントロポセン)」としようという動きも紹介している。それだけ人類が他の生物や地球環境に与える影響が大きくなってるというのがその理由。

 一般書ではあるが、膨大な注と参考文献(全558ページ中97ページ)もきちんとそのまま付けられている。

目次
はじめに
第1章 キツネ
第2章 イヌ
第3章 ネコ
第4章 その他の捕食者
第5章 進化について考えてみよう
第6章 ブタ
第7章 ウシ
第8章 ヒツジとヤギ
第9章 トナカイ
第10 章 ラクダ
第11章 ウマ
第12章 齧歯類
第13章 人間──T 進化
第14章 人間──U 社会性
第15章 人新世
エピローグ
付録

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2019年12月記

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