皮膚はすごい 傳田光洋 岩波科学ライブラリー ISBN978-4-00-029685-4 1,200円 2019年6月
最初の方は皮膚の解説、いろいろな動物、さらには植物の皮膚の紹介などの話題。ところが終わりの2つの章で驚きの展開。
一つは、ヒトの皮膚が体毛を失ったのは、そのために皮膚はきわめて優秀なセンサーとなり、さらにその情報を処理するために(レーダーである皮膚を持つエレファントノーズフィッシュや皮膚がディスプレイの能力を持つコウイカが大きな脳を持っているのと同じ)、ヒトは大きな脳を持つようなった。さらに筆者は、ヒトの皮膚は五感ばかりか、可視光線以外の電磁波、超音波、大気圧、酸素濃度、弱い磁場、さらには宇宙線、そればかりか重力波までも感じているのではないかとまでいう。そうした情報をも処理できる人ヒトの脳は、その内部に仮想空間を持つ来ることができるようななった。
もう一つ、これは皮膚の能力ではないが、ヒト(ホモ・サピエンス)の大きな特徴は、異分子(自閉症スペクトラムの人のように社会生活は苦手、付和雷同しない、空気を読めない、でも何からの面で特異な才能を持っている)を排除してこなかった、そうした人たちが未知の世界(文化だけではなく、新世界への旅立ち)を切り開いてきた、こうした能力がネアンデルタール人やデニソワ人のように世界に拡散できなかった人類との違いだろうともいっている。
皮膚のセンサーとしての能力を過大評価しているきらいはあるが、ホモ・サピエンスだけがなぜ世界中に拡散したのかという問題意識を共有していると思った。
目次
まえがき
1 人間だけじゃない!
2 皮膚は最強のバリアだ!
【ひとくちコラム】ハダカデバネズミ/魚の皮膚
3 皮膚は生まれ変わる?
【ひとくちコラム」皮膚とエナメル質
4 植物だって【皮膚】でできている
【一口コラム】植物と似ているホヤの皮膚/地衣類たちの「皮膚」
5 なんといっても皮膚は防御
【ひとくちコラム」樹皮に含まれる物質と人間の薬
6 極限環境の中でも平気な皮膚
7 驚くべき進化を遂げた皮膚
8 コミュニケーションする皮膚
9 人間の皮膚を再考する
【ひとくちコラム】表皮と脳
10 家を出た皮膚
参考文献
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2019年6月記