平妖伝 馮夢竜 太田辰夫訳 平凡社中国古典文学大系36
1,100円 昭和42年(1967年)11月
西遊記と水滸伝を合体・縮小したような話。もともとの20回本を、馮夢竜が話を膨らませて40回本にしたらしい。時代は北宋(960年〜1127年、おもに仁宗帝時代(1022年〜1063年))。
孫悟空のような怪猿白猿神(天界から妖術のマニュアル天書を盗み岩盤に彫りつけたことがばれてその番人になっている)、老道女に化けている老狐(聖姑姑)とその息子の胡黜児(さちゅつじ)→左?児(さか、いたずらして左足を射貫かれしまう)と娘の胡眉児(天子を誘惑しようとして殺される)→生まれ変わって胡永児(もちろん超美人)、鵞鳥の卵(蛋子)から生まれた蛋子(たんし)和尚(白猿神が彫った天書を写し、のちに聖姑姑に読んでもらう)や、妖術を使う張鸞(聖姑姑とはぐれた胡眉児の面倒を見る、ほかの妖術使いと争いになったとき蛋子和尚に仲裁される)など。
前半は彼らの銘々伝。後半は貝(ばい)州の軍官・王則(則天武后の生まれ変わり)と、彼と結婚した胡永児(則天武后の愛人張六郎の生まれ変わり)が起こしたちっぽけな反乱(白猿神は最初から加わっていない)。王則の反乱自体は史実。王則は給料未払いに不満を持つ兵隊たちに、左?児たちが妖術で貝州知事の倉庫から盗んだ米・銭を与えて信奉を得るが、権力を握るとしたい放題。ごく初期から蛋子和尚は反乱から距離を置きのちに鎮圧に協力、張鸞なども去り、最後まで残った王則、聖姑姑たちもあっさり鎮圧されてしまうという尻すぼみの話。まあ、荒唐無稽な前半があるのでいいか。
反乱軍の首領が妖術使いというのが、後の紅巾の乱(1351年〜1366年)、白蓮教徒の乱(1796年〜1804年)のイメージ作りにつながったのだと思う。
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2019年4月記