原子力の人類学 フクシマ、ラ・アーグ、セラフィールド 内山田晃 ISBN978-4-7917-7219-3 2,000円 2019年9月
筆者は反原発の立場のようだが、反原発を声高に主張するわけでもない。事故を起こしたフクシマ、“再処理工場”があるラ・アーグ(仏、MOX燃料もここで作られた)、かつて事故(火災)を起こし(ウィンズケール)、現在は原子力施設の解体・研究を行っているセラフィールド(英)、さらにウラン採掘・最初の原爆実験が行われたニューメキシコ(米)を旅する。そして、行く先々で知人(多くは反原発運動家、それ以外の“一般市民”、あるいは少数だが原子力関係施設で働いていた・いる人)と会い、会話を交わし、場合によってはサンプル採集などを手伝う。解説書ではないので、いきなり略語(NDA(英国原子力廃止措置機関 )など)が出てきたりもする。紀行文のようであり、ルポのようであり、筆者の心象を綴ったようでもあり、不思議な本。いずれにしても、巨大な原子力施設周辺の地(都会から遠く離れた場所)では、どこでも同じようなことが起きている(“雇用”を通じた巨大企業の地域支配と悪い面の隠蔽)が起きていることはわかる。
目次
はじめに
第1章 核兵器廃絶の戸惑い
第2章 舞台上の涙
第3章 コタンタン半島の超自然
第4章 曖昧にしたまま進む
幕間 私は私に追いつかない
第5章 境界の浸透性
第6章 海辺を歩く
第7章 ホロビトンの海
幕間 時間と真実
第8章 解体された家
第9章 放射能は関係ない
第10章 主権の影
幕間 ポールの生き方
おわりに
謝辞
参考文献
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2019年10月記