新しい地球惑星科学

新しい地球惑星科学 西山忠男・吉田茂生共編著 培風館
ISBN978-4-563-02522-9 3,080円 2019年3月

 大学初年度の前期・後期で各15回(全30回)の講義を想定したテキスト。一般の啓蒙書よりも少しレベルが高い。全体を読めば、地球惑星科学の全体像が浮かんでくると思う。Webで補足しているのもいい。http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/NewEPS/
 ただ、基礎編の14でいきなり気象災害の話になる。気象災害では応用みたいなので、やはり基礎は気象学の基礎の方が基礎っぽい。

 各章の筆者が違うので、細かい数字が違ったりしている。たとえば歳差の周期が、p.8では26,000年、p.62では27,000年、さらに、p.175では2.3万年と1.9万となっている。単純な歳差の周期は26,000年で、歳差と地球軌道の長軸方向の変化22,000周期と合わせて日射量の変化の周期が2.3万年と1.9万年になるはずだ。

 p.73のSiO2含有量での分類については、「塩基性岩、中性岩、酸性岩という用語は、あまり使われなくなって、苦鉄質岩(マフィック)、中生岩、珪長質岩(フェルシック)が普通だと思う。

 p.123の火星の極冠について、「極冠はCO2とH2Oの氷からなるが、H2Oは夏には昇華する。」は、「“CO2”は夏には昇華する」の間違いで、まだWebでは訂正されていない。

 p.137「地球に水や鉱物をもたらしたのは小惑星であるという説が有力である。」は誤解を招く表現。微惑星が衝突・合体して地球ができた、小惑星の中には当時の微惑星が残っているもの(原始太陽系の残存物)があるといいたいのだろうが。

 この本のもう一つの特徴は、筆筆陣が九州大学を中心とする九州の大学人がほとんどということもある。共立の現代地球科学入門シリーズが東北大学中心、岩波の地球惑星科学講座が東大を中心とする全国区など、九大中心は珍しいと思う。

目次
基礎編
1太陽とその惑星たち
2宇宙の始まりと進化
3恒星としての太陽とその一生
4地球を取り巻く磁気圏・電離圏と超高層大気
5大気はどのように運動しているか
6海洋はどのように運動しているのか
7地球表層での物質の流れ
8地球を輪切りにして見てみよう
9地球はどのような物質でできているのか
10地球は生きている
11地球上で生命はどのように進化してきたか
12火山とともに生きる
13地震はなぜ起こるのか
14気象災害
15地球システムにおける人類
応用編
1太陽系の惑星
2地球と惑星の形状と重力
3同位体と地球惑星の化学と年代学
4地球の形成と進化
5大気と海洋の相互作用
6地球環境変動と地球温暖化
7地球のマントルのダイナミクスとプレートテクトニクス
8地球のコアのダイナミクスと地磁気
9地球・惑星物質(鉱物)を知ろう
10生物の進化と地球史
11陸水の表層循環と地層の形成
12造山運動と変成作用
13日本列島の形成と進化
14海洋底の構造
15鉱物・エネルギー資源
付録

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2019年4月記

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