2100年の世界地図 峯陽一 岩波新書 IABN978-4-00-431788-3 960円 2019年8月
アフラシアとはアフリカ+アジアのこと。2100年にはアフラシアが世界の人口の大半を占めるようになるが、GDPではまだそれほどでもない。しかし、アジアの人口増加の先が見えてきたように、アフリカの人口増加も止まっているだろうと予想される。かつての西欧が世界を政治・経済面で支配した時期もせいぜい数百年、それ以前の対等な時代に戻るかもしれない。そうした中、アフラシアの世界をどう創ればいいのか、中国の一帯一路は何を意味するかなど、難しい問題は多い。筆者は、その中で(日本や中国ばかりではなく)、「かつての西洋人のように傲慢に振る舞わず」、すなわち覇権も求めず、寄生もせず、自由を奪わないことが大原則だと説く。さらに、民主主義の大原則、誰もが集団の意思決定に参加できなくてはならない、そして多数派の意思が強制力を持つということであっても、アフラシアの中の特定勢力が、また世界の多数派となるアフラシアが、少数派を無視するようなことがあってはならないともいっている。筆者こうしたところで、かつても(「利」だはなく)「義」はあったし、これからもそれは力になるだろうともいっている。いずれにしても、日本(日本人)は、中国・朝鮮(半島)・東南アジアで「まるで西洋人みたいに振る舞った」という過去を忘れてはならないという。昨今の風潮に対する筆者の危機感を大きいようだ。
個人的には、そのアフラシアの中のムスリムがどう動くのかわからないという問題があると思う。一部指導者には排他的な傾向が強いようなので。もっとも、だいたい2100年に自分が生きているわけはなく、そういう意味では実感が沸いてこない。
目次
はじめに
第一部 二一〇〇年の世界地図
第一章 二二世紀に向かう人口変化
第二章 定常状態への軟着陸
第三章 新たな経済圏と水平移民
第二部 後にいる者が先になる
第四章 ユーラシアの接続性
第五章 大陸と海のフロンティア
第六章 二つのシナリオ
第三部 アフラシアの時代
第七章 汎地域主義の萌芽
第八章 イスラーム
第九章 「南」のコミュニケーション
終章 共同体を想像する
あとがき
参考文献
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2019年8月記