水中都市

水中都市 安部公房 桃源社
昭和39年(1964年)12月 650円

目次
水中都市(昭和27年)
棒(昭和30年)
なわ
鉛の卵(昭和32年)
盲腸(昭和30年)
透視図法
闖入者(昭和26年)
イソップの裁判
バベルの塔の狸(昭和26年)

安部公房若かりしころの短編集。たぶん高校生のころに読んだはず。半世紀経っての再読となる。安倍公房の才気が迸る短編集だと思う。「バベルの塔の狸」には、夫人の安部真知の挿絵も(箱の絵も)。ただ、安倍公房・真知の同志的関係は、後に破綻することになる。

水中都市:父を自称する男が桃太郎餅みたいにはじけて魚(それも凶暴な)になり空中を泳ぎ出す、だがまわりわ知らないうちに水没した世界になった。

棒:デパートの屋上から落下する途中で棒になった男。この棒をめぐって、棒の意味について議論する先生と学生。

なわ:犬を縄で絞め殺す練習をした少女と妹が、どうしようもない、競艇狂い、お金のない父をその縄で。殺した父は競艇でお金を得たようだ。

鉛の卵:冬眠装置の故障で、100年後に目覚めるはずが80万年後の世界に目覚めてしまった。そこは緑色の人類と、彼らに奉仕するどれい族の世界。緑色の人類の正体は?

盲腸:食糧危機を乗り越えるべく、羊の盲腸を移植して(手術されて)世界初の草食人類にされる予定の男の哀しく哀れな話。

透視図法:簡易宿泊所で生活する男の回りで起こること。現実(おがくずを砂糖にする実験を続ける老人)。盗み(用意周到に下のベッドで寝ている男の服・靴を盗むための道具を作っていざ実行しようとして、下のベッドにその道具を伸ばそうとしたら、下から同じような道具が延びてきた)、泣く女(人通りのない作業場で寝ようとしたら、男の襲われそうな女の泣き声、でも何もできなかった)という3つの短編。

闖入者:突然部屋にちん入してきた変な家族。かれらの「民主的多数決」によっていいように扱われる男、こうした闖入者は相談しようとして弁護士の所にもいた。休息は死しかない。

イソップ:古代ギリシャ、独裁者を揶揄するイソップ、実態のないイソップとして学者対独裁者。実態のないイソップを独裁者根絶することができない。

バベルの塔の狸:数々の発明のアイデアを糧として成長したとらぬ狸に自分の影を食べられレ、その実体が透明になってしまった男。目だけが見える透明人間として官憲から追われる見に。とらぬ滝にに連れられてきたバベルの塔は、そのような狸たち(ダンテ狸はブルトン狸など)がたくさん。視線を恐れる彼らは、同じく人の視線を恐れるエホバが管理する目玉銀行に残った目も預けることに。男はとらぬ狸の「時間彫刻機」を奪い、とらぬ狸に影を食べられる直前に戻ることに成功する。

とらぬ狸

 

2017年10月記

戻る  home