ノモンハン戦争

ノモンハン戦争 田中克彦 岩波新書新赤1191
ISBN978-4-00-431191-1 780円 2009年6月

目次
まえがき
第1章 「事件」か「戦争」か
第2章 満州国の国境とホロンボイル
第3章 ハルハ廟事件からマンチューリ会議まで
第4章 抵抗するモンゴルの首脳たち
第5章 受難のブリヤート人 汎モンゴル主義者
第6章 汎モンゴル主義
第7章 ソ連、モンゴルからの満州脱出者
第8章 戦場の兵士たち
第9章 チョルバルサンの夢 果たせぬ独立
第10章 誰がこと戦争を望んだか
あとがき
参考文献
略年表

 氏がいうように、ノモンハン戦争を仕掛けた関東軍にはきちんとした情勢分析に基づいた戦略などなかっただろう。そして己の力・相手の力もわからないまま前線司令部の勝手な判断で戦闘状態に入り、完膚無きまでに粉砕されたというのが実態だったのだろう。さらにその反省もできない。 

 だが、それにもましてすごいのが、ソ連の傀儡となったモンゴルの首脳陣に対するソ連直接の粛正である。当時の政府・軍の幹部のほとんどが粛正されてしまったようだ。ソ連は、こうした日本の戦争行為は日本軍の東進戦略によると判断する。そしてモンゴル幹部たちは日本のその目的のために組織されたスパイの一員とされてしまったのだ。

 だがもちろん、満州に少し期待して満州に亡命したとしても、彼等を待っていたのはその意味を評価できない関東軍(日本)によって捨て駒として使われてしまう。

 つまり、日本とソ連の間にで独立を必死になって模索するモンゴルの人たちは両国に利用され、結局ソ連崩壊までそれを果たせなかったことになる。そしてじつは今でも彼等の主要な生活の場は中国領であり、中国政府はこうした民族問題が絡むと、昔と変わらぬ牙をむくことになる。

2009年8月記

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