<眠り病>は眠らない 山内一也・北潔 岩波科学ライブラリー140
ISBN978-4-00-007480-3 1,200円 2008年1月
目次
はじめに
1 なぜいま睡眠病なのか
2 アフリカ大陸を不毛にするナガナ病
3 睡眠病はなぜ起こるのか 原因解明にいたる道のり
4 原虫トリパノゾーマの生物学
5 遅れている睡眠病の診断法と治療法
6 新薬開発をめざして 日本からの貢献
あとがき
図の出典
主要参考文献
<眠り病>(睡眠病)はツェツェバエが媒介する、アフリカの風土病程度の認識しかなかった。1〜5までがその睡眠病と、病原である原虫ロリパノゾーマ解説(山内一也)、そして6が日本で開発されつつある新薬の話(北潔)である。
死に至る恐ろしい病気睡眠病は原虫トリパノゾーマが原因である。その解明の歴史、トリパノゾーマの巧妙な生命戦略、そして対抗策。アフリカがヨーロッパの植民地であったころは、それなりに当時の先端医学の研究対象になっていたが、独立し、貧困な国になると利益が上がらない製薬会社も新薬の研究から手を引いていったという。その結果、1960年代にはかなりへった患者数も、現在ではまた1930年代に逆戻り。さらには牛なども原虫の感染により飼えない地域が広く分布する。つまり、単純な医学の問題ではなく、社会・経済・政治の課題でもある。
睡眠病に対抗する薬も開発時期が古く、重篤な合併症(死亡率が3〜10%のものもある)を招くもの、高価な上に入院が必要なものなど、安心して使えるものではない。ともかく、安価で、経口剤(注射は針の使い回しでエイズなどの感染が心配)の開発が求められる。しかし、大手製薬会社は過去に開発された薬すら生産しない方向(国境なき医師団などの要請で期限付きで生産している状態)らしい。こうした中、日本での新薬の開発が進んでいるという。
2008年6月記