科学が進化する5つの条件

科学が進化する5つの条件 市川惇信 岩波科学ライブラリー146
ISBN978-4-00-007486-5 1,200円2008年7月

目次
プロローグ
1 進化する<知識としての科学>
2 「わかる」から「科学」へ進化する条件
3 言語の世界に自然を写す=科学
4 言語世界を実在世界に写す=技術
5 整合的世界に束縛される科学
6 科学を生み進化させる社会
エピローグ

 筆者の科学論(技術論)はフローチャートで図示されていてわかりやすい。科学の第1歩自然のモデル化(言語世界に自然を写す行為)すらできない、その意味がわからない理科教員もいそう。検証のループなんて無理? でも検証のループ抜きなら宗教になってしまうんだけど。技術の効率的な発展に科学が深く関わるって当たり前だけど、これもきちんと理解されていない?

 科学がブレークするための5つの条件、広い領域の研究者を集める、異なる背景の研究者を集める、研究者に明確なビジョンを与える、研究者に自由に発想させる、相互に刺激しあうよい雰囲気をつくるはその通りだと思う。

 サイエンス・スクールみたいな科学の成果だけを市民に伝えるだけの運動に対する違和感も共感する。科学の意味を考えもせずに。

 なにごとも進化との対比で述べるのは、筆者が進化学者であるから仕方ないか。あと、一神教・多神教と科学の関係については、私は態度保留である。

 ともかく、1930年生まれ(もう80歳近い)の筆者がこのような簡潔明快な文章(韜晦・繰り返しの多い意味不明の文章ではなく)を書けるということは、ほんの少し私にも希望を与えてくれる。私には無理だろうが…。

2008年9月記

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