ホモ・フロレシエンシス

ホモ・フロレシエンシス(上) マイクモーウッド ペニー・ヴァン・オオステルチィ
馬場悠男監訳 仲村明子訳 NHKブックス
ISBN978-4-14-091112-9 970円 2008年5月

目次
プロローグ
第1章 フローレス島 足跡をたどって
第2章 聖なる洞窟の発掘物語
第3章 人類、アジアへ
第4章 姿を現した謎の骨
第5章 ホモ・フロレシエンシスの正体に迫る
解説 人類の進化と拡散  馬場悠男

ホモ・フロレシエンシス(下) マイクモーウッド ペニー・ヴァン・オオステルチィ
馬場悠男監訳 仲村明子訳 NHKブックス
ISBN978-4-14-091113-6 970円 2008年5月

目次
第6章 よみがえる初期人類たちの姿
第7章 「島の法則」という進化の不思議
第8章 世界はホビットに息をのむ
第9章 奪われた人骨と論争の行方
エピローグ
参考文献
解説 ホモ・フロレシエンシス調査研究のドラマ 馬場悠男


 2004年にフローレス島で発掘された異様に小さい人類の化石。新種と見る人たちはホモ・フロレシエンシスと名付ける。これはその発見と発表をめぐるドラマ。とくに筆者たちのグループとインドネシア人類学・考古学の長老たちとの戦い。この本の印象では、インドネシアの学界も、数十年ほど前の日本の学界と同じような状況のようだ。つまり、長老の家父長的な支配。若い人たちをその権威で押さえつけ、異論を許さない態度。だがしかし、人類学・考古学の歴史は先進国による化石・遺跡の略奪の歴史でもあるわけで、ある程度防衛的になるのは仕方ないかもしれない。

 人類の新種と見るか病的な人たちと見るかの対立の中、監訳者は最初は曖昧な態度(両方の立場の人たちに知り合いがいるという事情もあり)をとっていたが、新種とみる立場に変わっていく。この対立は、人類の起源をめぐるアフリカ単一起源説と他地域起源説の対立に重なるという。ただやはり、長期間生存し続けたとなると、病的な人たちの集団という可能性は低いだろう。

 本当にこれが新種として、380ccという脳でどのような文化生活していたのか、本当にエレクトスの仲間(末裔)なのかなど興味は尽きない。なお、人類の進化については「われわれは何者か」のなかの「第3部 生命」の「第3章 人類の起源と進化(1)」も参照。
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/seimei/jinrui-01.htm

2008年8月記

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