廃電車レクイエム 丸田祥三 岩波書店
ISBN978-4-00-024443-5 1,800円 2008年7月
使われなくなった路面電車は、その一部がいろいろなところに引き取られていった。でも管理されて長持ちするのは少ないようで、短い時間のウチにぼろぼろになっていく。筆者は子どものころからこうしたものを撮影していたらしい。子どものころ既にぼろぼろになった廃電車を撮影していたら、いやな思い出を持つ人もいると諭されたということもあったという。でも筆者が子どものころぼろぼろだったものは既に形もなくなっているのだろう。
ちょっと切ない感じがするのは、こうした電車が好きなのにその変わり果てた姿を見せられること以上に、自分がまだ若かった過去に対する思いが甦り、現在の老いた姿が重なるからか。
筆者の母親が隙間だらけの都電の椅子の後ろにスケッチブックを落としてしまったことがあるというが、筆者が解体に立ち会った都電からそれが出てきたらまさに劇的だったはずだが、さすがにこれはなかったようだ。
2008年10月記