ユークリッド『原論』とは何か

ユークリッド『原論』とは何か 齋藤憲 岩波科学ライブラリー148
ISBN978-4-00-007488-9 1,200円 2008年9月

目次
第1章 『原論』とはどんな本か
第2章 数学の論証スタイルの決定版−『原論』第I巻
第3章 数学 vs 代数学−『原論』第II巻
第4章 初期ギリシア数学の歴史−『原論』の背景
第5章 図版はどう扱われたか−『原論』第III巻
第6章 解析という方法−『原論』第IV巻
第7章 語られた数学と書かれた数学
第8章 比例の定義と非共測量−『原論』第V巻
関連図書
あとがき

 一度は読んでみたい『原論』(読み出したらたちまち眠くなるであろうが)、これが2000年以上前に書かれたとは。帯にあるように誰が、何のために書いたのだろう。巧妙に“哲学論争”を避けつつ、でも厳密に、また用意周到に順を追って展開する。

 当時の哲学界の雰囲気、また第II章は代数を幾何学的に展開したという見解に対する異議、記号の不統一性などの説明がおもしろい。宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる「その時代の歴史(地理だっけ?)」という感じ。

 「古典研究の提供する批判精神が、我々を現代の権威からも自由にする」ということを繰り返していう必要があると筆者はいうが、権威からの自由って本当に難しいと思う。

2008年10月記

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