日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ 小林英夫 講談社現代新書1900
ISBN978-4-06-387900-2 720円 2007年7月
目次
はじめに
矮小化された戦争
序章 殲滅戦争と消耗戦争
第1章 開戦への歩み
第2章 破綻した戦略
第3章 傀儡の国
第4章 見果てぬ夢
第5章 二つのパワー
第6章 『検閲月報』を読む
主要参考文献
筆者は日本の(短期)「殲滅戦」(→ハードパワー)戦術と、中国(蒋介石政権)の(長期)「消耗戦」(→ソフトパワー)戦術の対決という図式で日中戦争を読み解こうとしている。筆者の「消耗戦」の解釈の中には、世界世論の支持・各国の支援というものまでを含んでいる。日本はあくまでも宣戦布告なしの「事件」「事変」と位置づけて、軍事力だけで突き進んでいく。
ハードには強くても、ソフトには弱いという日本の特質は、今日までも続いていて、一見して繁栄している日本も、その将来は危ういと警告もする。
だが、対日本では「正しい」戦略を立てて、重慶に引き下がってまで徹底抗戦した蒋介石国民党軍が、結局は毛沢東共産軍に敗れたのはなぜだろう。日中戦争は、ここまで一貫して見ないとならないのではないか。この本の課題ではないかもしれないが。
第6章で紹介されている『検閲月報』(焼却が間に合わずに埋められたものを1953年に偶然に発見、2003年に公開)は、前線の兵士の生の声まで聞こえる貴重な史料だと思う。
歴史の評価は難しく、あの日本軍の失敗が結果的には今日の日本を産んだとも考えられる。自分自身の生活を考えても、一応喰うには困らないどころか、若いころは考えもしなかったものを持てるようになり(20代のころ3C=Car、Camera(一眼レフ)、Computerを持ちたかった)、年に1回程度海外までも旅行できるようになった。思い返すと、子どものころはTV・電話もなかったし(それが当たり前)、食事のたびに親(大人)は子どもである私に対し、「きちんと食べたか」「たくさん食べたか」と聞いていた。戦後10数年間くらいは、そのように貧しかったのだ。
2007年7月記