モスラの精神史 小野俊太郎 講談社現代新書
ISBN978-4-06-287910-9 760円 2007年7月
目次
プロローグ モスラの飛んだ日
第1章 3人の原作者
第2章 モスラはなぜ蛾なのか
第3章 主人公はいったい誰か
第4章 インファント島と南方幻想
第5章 モスラ神話と安保条約
第6章 見せ物にされた小美人と悪徳興行師
第7章 『モスラ』とインドネシア
第8章 小河内ダムから出現したわけ
第9章 国会議事堂か、東京タワーか
第10章 同盟国を襲うモスラ
第11章 平和主義と大阪万博
第12章 後継者としての王蟲
エピローグ 「もう一つの主題歌」
あの、ザ・ピーナツの「モスラーっや、モスラー」だけが肥大化して記憶に残っていた。モスラが小河内ダムから出現したとか、ニューヨークを襲ったなどという場面は記憶から消えていた。
この本を読んで、原作者(発光妖精とモスラ)が中村真一郎・福永武彦・堀田善衛という超豪華執筆陣あったことを初めて知った。だから当然彼らが分担して、前・中・後を書いたということも。もっとも、監督本多氏、脚本家関沢氏は「アイデアだけいただき」と豪語していたらしい。
1961年公開ということで、まだ60年安保の余韻、とくにインテリゲンチャーである原作者3人は敗北の余韻が残っていただろう時代でもある。悪徳興行師はなぜか唯一の超大国ロリシカ(原作ではロシリカ)政府に保護されてもしている。
あのモスラの歌も、インドネシア語で、当時インドネシアに対する戦争賠償の一貫として、大勢来ていたインドネシア留学生に頼んだのだという。こうしたとことにも当時の状況が反映されていた。(「モスラよ/永遠の生命 モスラよ/悲しき下僕の祈りに応えて/今こそ 蘇れ/モスラよ/力強き生命を得て 我らを守れ 平和を守れ/平和こそは/永遠に続く/繁栄の道である」)
筆者も指摘ているように、モスラの後継者はナウシカに登場する王蟲であろう。
もう一度、初めから最後まで映画モスラを観たくなった。
2007年7月記、2009年4月誤記削除