イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む 宮本常一 平凡社ライブラリー
ISBN4-582-76453-3 1,200円 2002年12月初版(2005年6月5刷)
目次
第1章 穀物や果物が豊富で、
第2章 蚤の大群が襲来したために、
第3章 子どもたちは
第4章 仕事もなく、
第5章 あらゆる種類のお面やお人形、
第6章 私はシーボルト氏に
第7章 いつか遠い昔において
注
紀行文を読む 山崎禅雄
解説 現代日本の背骨を見据えるまなざし 佐野眞一
1984年10月、未来社より出版された本の再版。昭和51年(1976年)9月〜翌年3月までに行われた購読会の記録である。
イザベラ・バードの日本の庶民を見る目は温かい。当時(明治初期)の日本は貧しかったが、でもそれなりに平和に暮らしていたようだ。あけ広げられた家々のなかに見られる家族団らんの姿、これはもう当時のイギリスにもあまりなかったようだ。今の日本ではどうか。
先日の中国四川省の旅行で見た中国の人々の生活は、イザベラ・バードが書いた当時の日本に似ていると思った。開け放たれた家の中に見える団らんの姿、そればかりかそれほど裕福と思えない家々の前の路上での老若男女入り乱れての遊び(麻雀、カード)、あくせく働かない一つの生き方だと思った。
宮本常一はわざとそうしているのだろうが、イザベラ・バードの日本人が子どもをかわいがることに対する異常なまでのかわいがり方の裏までは書かずに、素直に紹介している。だが、その背後には、とくにバードが旅行した東北地方においては子どもの死亡率が高かったこと、そればかりか間引きなども行われていたこと、だからこそ生きている子どもを大切にしていることがある。
賄賂をもらう文化(上前をはねる文化)が、当時世の中を騒がせていたロッキード事件とつながっているようにも書いているが、それはどうだろう。
いずれにしても、バードの他の紀行文も読みたくなった。
2005年8月記