白土三平論

白土三平論 四方田犬彦 作品社
ISBN4-87893-633-9  2004年2月(2004年7月4刷) 2,400円

目次
はじめに
I 漫画家になるまで
II 初期の貸本漫画
III 『忍者武芸帳』
IV 60年代前半の長編
V 60年代前半の短編2004年7月記
VI 『カムイ伝』
VII 『神話伝説』と『女星』
VIII カムイのその後
IX 白土三平の食物誌
X 結論
白土三平年譜
謝辞

 白土三平の漫画はおもしろかった。私が読み始めたのはすでにメジャー誌上であった。独立した別の漫画の登場人物が、それぞれ関連しあっているのもおもしろかった。もちろん、忍術の「解説」が子供心をくすぐった。『忍者武芸帳』は大手出版社から出た単行本で読んだ。背景の歴史上で動く駒としての影丸他の登場人物が生き生きとしていた。歴史の流れとは別の明美とか蛍火とかの女性陣も魅力的だった。

 『カムイ伝』はリアルタイムで読んだ。ガロを立ち読みし、大手出版社が追っかけて出す単行本(※)を買った。初めの方はおもしろかった。カムイの復活のトリックあたりからおもしろさは薄れていって、なかば惰性で読み続けた。すでに『忍者武芸帳』の明るさはなく、次第に暗く展望がなくなっていった(これはその時代の雰囲気と同じであった)。でも終わりがけになって、これまで類型的だった支配側の登場人物の殻を破る錦丹波という魅力のある人物が出てきて、おもしろさが復活した。とはいっても、全体としては壮大な失敗作だったと思う。

 この本は、白土三平の長編・短編のあらすじの紹介までもなされており、そういう面でも大変に便利である(私は「カムイ伝」以降をほとんど知らない)。また、赤目プロ創設以降、作画は小島剛夕(「子連れ狼」の作者でもある、故人)や弟鉄二、さらには小山春夫などによることなども丁寧に追っかけている。

 あと、「政治的」には白土三平は一貫して共産党支持者だったはずだが(少なくとも70年代前半までは)、反代々木左翼に熱烈な支持者がいたというねじれ現象も分析して欲しかった。

(※)家が狭かったので、幾度か蔵書を手放さなくてはならなくなったことがあり、泣く泣く全巻を処分した哀しい記憶がある。

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