生命の星・エウロパ 長沼毅 NHKブックス992
ISBN4-14-001992-1 1,020円 2004年3月
目次
まえがき
第1章 エウロパの海 大いなる生命の予感
第2章 地球の中のエウロパ 多様な生命の代謝戦略
第3章 地底に広がる海 知らぜらる生命のゆりかご
第4章 氷の下の海 エウロパ生命探査の前哨戦として
第5章 酸素、酸素、酸素! エウロパの生命の進化を探る
第6章 氷と水を探せ エウロパ生命から太陽系生命へ
第7章 生命探査とは
参考文献・資料
あとがき
生命(いわゆる地球型生命=液体の水の存在を前提として、炭素の高分子を体の材料とし、化学反応を生命のエネルギーとする)の存在が期待されている天体の一つとして、木星の衛星のエウロパがある。表面の氷の下に広大な海が存在していることがほぼ確実だからである。もちろん、こうしたとことでは太陽の光エネルギーは期待できない。これまでの常識では、すべての生態系の基礎となるのは、太陽のエネルギーであるということになっていた。
こうした常識をくつがえしたのが深海の熱水系で見つかった、太陽に依存しない、熱水(地熱)のエネルギーを基礎とする生態系である。もしかすると、生命そのものをこうした場所で誕生したのかもしれない。
隣の木星の衛星イオには活火山があるので、エウロパの海のなかにも地熱地帯があってもおかしくはない。とすれば、エウロパには生命存在の条件はあるということになる。実際地球上の過酷な場所にも生命は存在する。
生命が存在するとすれば、どのように探査をすればよいのか。また、エウロパ以外ではどうかなどが検討されている。
この本では地球内部に熱源はないというように書かれているが、放射性同位元素の発熱量は今日でも無視できない(※)。
またこの本で書かれている、水星、金星の自転周期は対恒星自転周期で、水星上での太陽日は約180日、金星上では約120日である。
太陽系の惑星については、「われわれは何者か」の中の<惑星各論>参照。
※ 「地球惑星科学入門」(岩波地球惑星科学講座1、岩波書店、1996年)によると、集積のエネルギー2.5×1032J、分化(コア・マントルの分化)のエネルギー2.5×1031J、放射能のエネルギー〜1×1030J、収縮エネルギー〜1×1031J、化学エネルギー〜1×1031Jとしている。ただし、集積のエネルギーと分化のエネルギーは地球誕生時の初期段階でかなりが放出されてしまったであろう。
2004年11月記