クラカトアの大噴火 世界の歴史を動かした火山
サイモン・ウィンチェスター 柴田裕之訳 早川書房
ISBN4-15-208543-6 2,800円 2004年1月
目次
序
第1章 尖った山のある島
第2章 運河に潜むワニ
第3章 ウォーレス線上の接近遭遇
第4章 過去の火山活動
第5章 地獄の門が開かれる
第6章 日の光も届かぬ海底で
第7章 おびえたゾウの奇妙な行動
第8章 大爆発、洪水、最後の審判の日
第9章 打ちのめされた民の反乱
第10章 子供の誕生
エピローグ この世が爆発した場所
さらに詳しく知りたい人のための推薦(一作だけは禁止)図書・映像
謝辞
訳者あとがき
索引
史上最大の音を出したといわれる1883年8月27日のクラカトアの大爆発。インドネシアジャワ島とスマトラ島の間にある火山島クラカトア。その爆発音はインド洋の対岸マダガスカル近くのロドリゲス島でも聞こえたという。
この本は、ジャワ島がオランダの植民地に組み入れられるところから始まって、その政治・文化、さらには生物分布のウォーレス線なども解説も行いながら、クライマックスの1883年の大噴火に持っていく。また、クラカトアという名がどのように誤解されて伝わったのかも書いてある。
大噴火の様子そのものは、噴煙に包まれ漆黒の世界になってしまったために目撃者はいない、あるいは死んでいる。だが、大カルデラができた(クラカトア本体が海中に陥没した)ために発生した大津波などによって、大量の犠牲者が出ている。津波は大西洋にまで回り込み、フランスでも観測されている。また、その爆発の衝撃波は気圧の変動として地球を何周もしている。
その惨事の影響が、植民地支配を崩す遠因になったことも示唆している。
また、筆者にクラカトアの子供(アナック・クラカトア)に上陸し、その噴火口を確かめもしている。
本文だけで450ページにもなる長大な本だが、筆者の蘊蓄が伺える読み応えのある本になっている。もっとも、筆者が強調するほど、この火山がそこに存在している必然性、またその活動の活発さの説明は今なお不十分であると思う。
2004年5月記