イスラーム主義とは何か 大塚和夫 岩波新書新赤885
ISBN4-00-430885-2 700円 2004年4月
目次
序章 「イスラム原理主義」から「イスラーム主義」へ
第1章 「一神論の徒」の蜂起
間奏曲1 もう一つの改革運動-ネオ−スーフィズム
第2章 「イスラーム救世主」の栄光と挫折
間奏曲2 理想としての父祖たち−サラフィー主義
第3章 背広を着た「伝統主義者」
第4章 イスラーム復興の時代
第5章 ムスリムの「抵抗」
終章 「9.11」の前と後
あとがき
主要参考文献
索引
どうもイスラームはわかりにくい。第4代カリフであるアリー暗殺後カリフを継承したウマイヤ一族(ウマイヤ朝、アッバス朝)の流れ=スンナ(スンニー)派と、アリの子孫のみを指導者とするシーア派という違いからおぼつかない。
本書はエジプトやサウディアラビアで何度に渡ってフィールドワークをしていた筆者による、おもにスンナ派の諸系列(改革派)の解説と、今日における彼らの位置について述べる。
そもそもサウディアラビア自身、18世紀アラビア半島で起こったイスラム改革運動(「ワッハーブ運動」の結果生まれたのだ。そのアウディアラビアが、対イラクなどではアメリカに近い立場をとることの不思議。
スーダンでもマフディー運動がある。しかし、エジプトのムスリム同胞団は伝統的な宗教指導者層からではなく、西洋的な教育を受けた人たちが中核になっているという特徴がある。そして、政教分離が近代というヨーロッパの常識が通じない、政教一致を目指すこと自身が、ヨーロッパという圧力に対する宗教改革の一環であることを明らかにする。
ただし、タリバーンはそうしたものとも少し異質であるという分析もある。
いずれにしても、一読しただけではなかなかわかりにくい。
2004年6月記