逆システム学−市場と生命のしくみを解き明かす− 金子勝・児玉龍彦 岩波新書新赤875
ISBN4-00-430875 780円 2004年1月
目次
序章 逆システム学とは何か
第1章 セントラルドグマの暴走
第2章 制度の束と多重フィードバック
第3章 フィードフォワードの罠-医学と経済学の逆システム学
第4章 変化と進化における多様性と適応
終章 どのようにしてパラダイムは転換してきたか
あとがき
経済学者金子勝と、生物学者児玉龍彦の共著。
セントラルドグマに代表される要素還元主義と、その対極にある全体論に対抗し、多重フィードバック(調節機能、セーフティネット)から生命や経済の全体を見ようとするものである。
人間の遺伝子のうちタンパク質をしているのはわずか2%以下、残りは調節機能にかかわっているという。そうしたことが生命としての人間を維持しているが、その幾重にも重なっているフィードバック(調節機能)の一番弱いところからシステムは壊れて病気になっていくという。
経済においても、そうしたフィードバックが効かなくなっている日本(情報が隠されている日本)に典型的な経済危機が訪れ、それに対して「グローバルスタンダード」を持ち込んでも解決にならない、仕組みの改革こそが必要であることを主張する。
結局、「適者生存」ではなく多様性を認め合うことこそがシステムの安定を保証するということになる。
筆者(児玉氏)はJ.モノー(フィードバックの重要性を認めた)の優生学的な発想に驚いてるが、私自身は「進化の中立説」の木村資生のそれにびっくりしたこともある。
2004年7月記