全地球凍結

全地球凍結 川上紳一 集英社新書 
ISBN4-08-720209-7 680円 2003年9月

目次
プロローグ 地球史の闇に当てられる光
第1章 「全球凍結仮説」の登場
第2章 キャップ・カーボネート
第3章 対立する仮説
第4章 反論からの検証
第5章 気候変動論から見た「全球凍結仮説」
第6章 生物科学と「全球凍結仮説」
エピローグ
参考文献

 まず第1章で、「全地球凍結説」が出てきた経緯を説明する。これまでは生物が35億年以上前から絶えることなく続いてきたのは、地球の環境が生命の存在を許す範囲内での変動しかなかった、つまり全地球凍結のような極端なことは起きなかったからだろうと思われてきた。しかし、先カンブリア時代後期(原生代後期)に幅広く氷河堆積物の痕跡が認められるということから、1992年にCITのJ.L.カーシェビングが「スノーボール・アース仮説」を出した。それは発展させたのは、ハーバート大のP.F.ホフマンであった。筆者はそのホフマン教授に誘われて、アフリカのナミビアにある、氷河性堆積物に被さる縞状炭酸塩岩(キャップ・カーボネート)の調査に出かける。このキャップ・カーボネートは、氷期が終わった後の温暖な時代に堆積したというのである。

 第2章では、本当に「全地球凍結」という時期があったのかを検証しようとする。キャップ・カーボネートは凍結した地球を融かした二酸化炭素が炭酸塩岩として急速に堆積したと考えるとうまくいく。だが、今のところ確実にそうだといえるとことまではいっていない。

 第3章では、「全地球凍結説」に対する別の説、「地軸の傾きの変化説」「海水大循環変化説」「メタンハイドレート説」を紹介する。

 第4章では、これらの説を検討する。「地軸の傾きの変化」であれば、全地球が氷河に覆われることはないので、氷河堆積物の分布を調べればいいこと。「メタンハイドレート説」では、「全地球凍結説」と炭素同位体以上の時期が異なること。これラバポイントになるであろうという予想を述べる。

 第5章では、気候シミュレーションから本当に全地球凍結が起きうるかを検証しようとする。全地球が凍結するようなことは、どういう条件があれば起きうるかを調べる。

 最後の第6章では、生物との関係を考える。もし、全地球凍結という自体になったとき、生物はどのように生き延びたのか。また、進化との関係はどうかなどである。

 現在進行形の話なので、いろいろな仮説(それに対する仮説)をどのように検証しようとしているのか、つまり科学的な方法とはどのようなことなのかがよくわかる本だと思う。

2003年9月記

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