東海地震がわかる本 名古屋大学災害対策室編集 東京新聞出版局
ISBN4-8083-0777-4 1,500円 2003年4月(2003年5月再版)
目次
PART I 東海地震はいかなるものか
第1章 東海地方で起きていること 地下で起きたゆっくりすべり
-2000年夏からの動き-
第2章 東海地震って何?
PART II それならばどうする?
第3章 地震に強い建物
第4章 身の回りの防災
第5章 本当にわかっているの
PART III 地震情報
第6章 大都市圏の地震危険度
第7章 揺れと津波
第8章 よくわかる地震基礎講座
PART IV 歴史と活断層に学ぶ地震と防災
第9章 歴史から学ぶ東海地震
第10章 陸の下に潜む地震
東海地方が地震の危険地帯と認定されてから久しい。さらに最近では、2000年夏に公表された地殻変動(どうもスロースリップらしい)や、震源域の見直し(2001年、西に拡大した)もあった。こうした地震情報については、短期的な評価を発表する気象庁と、長期的な評価を発表する国土地理院の情報の違いも解説している。
この本は、地震そのものの解説から、防災に至るまで、やさしく、しかしプロの地震学者が直接書いているので正確さが失わていない。東海地方に住む人ばかりではなく、地震の危険地帯(って、日本中?)にすむ人が持っているべき、最低の知識が書かれているといってもいいだろう。
ただ、気になるのは「稲むらの火」の評価で、この本を信じてしまうと『津波は引き波から始まる』という神話、すなわち津波が来るまでには時間的な余裕があるということが固定化されかねない。海岸近くに住む人は大きな揺れ、あるいは怪しい揺れ(ゆっくりとした揺れが長く続くなど)が来たら、まず高台を目指して逃げるというのが鉄則だと思う。
2003年6月記