親指はなぜ太い

親指はなぜ太い 島泰三 中公新書1709
ISBN4-12-101709-9 880円 2003年8月

目次
はじめに
第1章 アイアイに会うために
第2章 レムール類の特別な形と主食のバラエティー
第3章 アフリカの原猿類の特別な形を主食
第4章 ニホンザルのほお袋と繊細な指先
第5章 ナックル・ウォーキングの謎
第6章 ゴリラとオランウータンの謎
第7章 初期人類の主食は何か
第8章 直立二本足歩行の起源
終章 石を握る。そして歩き出す
あとがきにかえて
巻末資料
引用文献・参考文献

 アイアイのようなマダガスカルの原猿類を研究するうちに、「口と手の形は、その主食の種類によって決められる。」という仮説(口と手連合仮説)を考え、それを検証しようとする。そして、それをもとに人類の起源を考える。

 現在の人の形態を標準に、サルたちの形態を「劣っている」とするのは決定的な誤りで、それぞれがそれぞれの主食とそれを得るための行動に適したものになっているという主張は説得がある。

 人類(の祖先)については、骨食(サバンナでは骨は意外とたくさん落ちている)していたのではないかという仮説を立てている。骨を割るために石を使う、そのために親指が他の指に対向し太くなった、こうすれば骨を割る石を握りやすい。歯も骨が主食の時に適応していると主張する。このボーンハンティング(骨猟)をした祖先は、石を握りしめ、骨を持ち運ぶ、あるいは捕食者に石を投げる、つまり、道具と食糧を持って立ち上がり、歩き出したというわけだ。

 著者は在野の研究者(大学に籍がない)である。時間とお金からはじまり、これまでいろいろな苦労があったのではないかと想像される。

 なお、ほとんどの日本人は、「ア〜イアイッ、ア〜イアイッ、おサ〜ルさんだよ〜」という歌で、アイアイがサルの仲間だと知っていると思うが、口絵のアイアイの姿を見て、これだけでサルの仲間と分かる人がどれだけいるだろう。だいたたい、歌アイアイの振り付けのおサルさんは、ニホンザルかチンパンジーを想定しているようだし…。

マダガスカル アイアイのすむ島

2003年9月記

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