オランウータンの不思議社会

オランウータンの不思議社会 鈴木晃 岩波ジュニア新書448
ISBN4-00-500448-2 780円 2003年9月

目次
I 森のヒト−オランウータン
II オランウータンの母子社会をさぐる
III オランウータンの文化的行動
IV オランウータンの社会
V オランウータンを守る

 これまでのオランウータンは単独生活者であるという説に対して、筆者はオランウータンにも「社会」があるという考えであり、フィールドの観察でもそれを裏付けているという。

 だが、そのオランウータンの生活できる環境は危機に瀕している。一方では森林伐採(と多分それが引き金となる森林火災)、もう一方では資源採掘、ようするに「開発」により森林が狭くなっている。政情不安がそれを拡大する。

 また、「保護」されたオランウータンを森に返す作業も、世に言うほど簡単ではなく、これまでの例もきちんと検討されていないことを強調する。

 この本ではそればかりではなく、筆者がチンパンジーからオランウータンに研究対象を変えようとしたとき(アフリカの政情不安もあって)、河合雅雄氏(当時の京都大学霊長類研究所所長)はオランウータンは原猿類と同じ単独生活者社会なので研究の価値がないといわれたとか、フォッシー氏はゴリラ密猟者をとらえてリンチを加えていた故に殺されたとか、ビックリ情報も書かれている。

2003年10月記

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