ららら科學の子 矢作俊彦 文藝春秋
ISBN4-16-322200-6 1,800円 2003年9月
あらすじ
30年前、活動家だった彼は殺人未遂事件で指名手配される。彼は文化大革命を見学することを目的として、しかしもうそれが終わりを迎えるころの中国に密出国する。彼を中国に引き入れた男も、力をなくしていく。田舎に下放され、そこで30年暮らす。一緒に下放されたもと「赤い資本家」(彼を中国に呼んだ男の父)の娘(じつは孫)と結婚する。ようやく、この田舎にも解放の波が押し寄せる。
仕事を求める妻は上海の出ていく。彼は、松茸を売ったお金をもとに、蛇頭の船で日本に密入国する。脱走した彼は、学生運動仲間、現在は裏の世界の大物志垣(ハワイにいる)の組織(傑(ジェイ)、瀬島たち)に匿われる。
浦島太郎の生活。30年前の感覚で、いまの日本を見る。不思議な女子高生との交流、蛇頭組織との駆け引き(これは志垣の組織がやってくれる)などの中、志垣の組織の力を借りて自分の父母・妹を捜す。
父母の死を確認し、妹(彼をとても慕っていた)は立派な“評論家”になっていた。妹には、自分の生存を電話で伝え、志垣の組織が用意したパスポートを使って、彼は妻を捜すために中国に戻るのであった。
感想
主人公の時間は30年前で止まっているので、若い人たちが読めば、抱腹絶倒の話かもしれない。でも、われわれの世代にはちょっと哀しい小説。
2003年10月記