いのちを守る地震防災学

いのちを守る地震防災学 林春男 岩波書店
ISBN4-00-005048-6 2,200円 2003年6月

目次
はじめに
第1章 震災と防災について
第2章 地震について知る
第3章 社会の防災力を高める
第4章 被災するということ
第5章 いのちを守る
第6章 社会機能を回復させる
第7章 生活と社会を再建する
第8章 これからの地震防災のあり方
おわりに

 筆者は京都大学防災研究所附属巨大災害研究センター教授。1995年の阪神・淡路大震災後の神戸市や兵庫県の復興計画に協力した経験を持つ。

 いのちを守るためには「トリアージュ」=傷ついた人を治療する際の優先順位を判断することも必要だとか、被災者たちは「公平さ」にとても敏感になるとか、具体的な経験からの発言は重い。

 地域密着型の新聞・FM報道が有効だったこと、法的には最長2年と決められている仮設住宅だが、実際は一度はいるとなかなか出ていかない(いけない)のが現状だが(1958年の伊勢湾台風では最終的撤去は1998年)、神戸市の場合は5年で撤去できたそうだ。

 罹災証明発行の難しさ、災害後の復興計画(まず自分の家を再建したい住民と計画的に再建したい行政)、あるいは建物再建で潤ったのは大阪・東京に本社がある会社で、地元の建築業者はいま深刻な不況に見舞われていることも報告されている。

 最後に、来たるべく大地激動の時代(2035年頃?)に備え、自助7割、互助2割、公助1割と想定して、市民の防災力を高めておくことを提唱する。

 市民としても、行政の立場の人も一読しておく本だと思う。

 姉妹書に、「いのちを守る気象学」がある。

2003年7月記、9月追記

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