冬眠する哺乳類 川道武男他編 東京大学出版会
5,200円 2000年10月 ISBN:4-13-060208-x
1 冬眠とはなにか(冬眠現象;冬眠の生態学)
2 冬眠する哺乳類(コウモリ;シマリス;ヤマネ;クマ―生態的側面から;
クマ―生理的側面から;アカネズミと日内休眠)
3 冬眠研究の応用(冬眠制御;ヒトへの応用)
哺乳類の冬眠は不思議な行動である。恒温であることが特徴の哺乳類が、自ら体温を下げ(ただし体温調節機能は維持している、高温相と低温相の相変化ができるという感じ)、新陳代謝の速さを落とすわけだから。ホッキョクジリスなどでは-2.9℃という体温まで報告されているという。ニホンヤマネ(右の写真)でも体温が1℃ということがあるらしい。一般に冬眠に入るときはゆっくりゆっくりと体温を下げ、目覚めるときは一気に体温を上げるという。どのようにそのスイッチを切り替えているのか。
さらに不思議なのは、クマである。冬眠する数少ない大型哺乳類でもある(他はアナグマだけ)。冬眠するクマは4種類(そのうちのホッキョクグマは雌だけが冬眠)、日本には2種類いる。ヒグマ(グリズリー)とツキノワグマ(アジアクロクマ)である。
クマは冬眠中でも体温をあまり下げない(そのためかつては冬眠ではないとされた時期もあった)。活動期の37℃〜39℃に対し、冬眠期でも31℃〜35℃くらいはある。また、他の冬眠する哺乳類は冬眠中にも何回か起きて摂食・排泄行動を取るが、クマはずっと寝続ける(地域によっては7ヶ月も寝続けるものもいるという)、さらに雌は冬眠中に出産もするという具合である。
それでも基礎代謝量は確実に下げている。また、排尿はしないが腎臓は働いており、そこでつくられた尿は再び膀胱壁から吸収され、アミノ酸再構築に利用されるという。また何ヶ月も動かなくても、骨の代謝はきちんと行われているので、骨がもろくなることもないという。
あと、自宅近辺では朝夕コウモリ(アブラコウモリ?)がたくさん飛び回っているが、この夏の時期は見られない。夏眠するとも思えないので、避暑に出かけているのかな。
ともかく、冬眠中はたんに「時間が遅く進んでいる」わけで、ヒトが冬眠(人工冬眠)できるようになっても、冬眠することによって「寿命」を延ばしてもあまり意味はないと思う。
ともかくまだ冬眠については、よくわかっていないことが多いらしく、今後の研究課題もたくさんあるようだ。
2002年8月記
朝の4時半ころ、近くの大きな川に行ったら、たくさんのコウモリが飛んでいました。ですから、たまたまうちの近くでは見られなくなっているだけでした。
2002年8月17日記