ソ連=党が所有した国家

ソ連=党が所有した国家 U.S.S.R. 1917-1991
下斗内伸夫 講談社選書メチエ 2002年9月
1,500円 ISBN4-16-258248-1

目次
序章 党が国家であった世紀
第1章 ロシア革命とボルシェビク
第2章 共産党とアパラチク(機関専従員)
第3章 ネップとアンチ・ルイノチニク(反市場主義)
第4章 スターリン体制とスターリニスト
第5章 世界大戦とナルコミンデル(外務人民委員)
第6章 冷戦とデルジャブニク(大国主義者)
第7章 非スターリン化とドクマチーク(教条主義者)
第8章 「停滞の時代」の中のペンシオネール(年金生活者)
終章 モロトフとソ連崩壊

 モロトフ・カクテルでその名が知られているモロトフ(1890年-1986年)を軸に、ソ連の歴史を追う。1912年(22歳)でプラウダ編集委員、21年(31歳)から57年(67歳)まで政治局員(スターリンは1953年死去、フルシチョフのスターリン批判演説は1956年)、1957年に政治局を追われ、さらに1962年には党を除名され、年金生活者(月120ルーブル、ふつうの労働者なみだという)となったが、1984年に復党し、1986年ゴルバチョフ時代に死ぬ。

 モロトフはスターリン時代はつねにNo.2を維持し、夫人までも逮捕される中、そしてスターリン死後も忠実なスターリニストであった。彼もからんだすさまじい餓死者を産んだ農業政策や、東欧諸国を巡る秘密協定、もちろん凄惨な粛清など、ソ連時代の裏面史の立役者でもあった。とくに農業問題は、つねにソ連のアキレス腱であった。

 個人的な感慨は、若いころからソ連はこのままではいかない、いつかは崩壊するだろうとは思っていたが、まさか私の目の黒いうちに本当に崩壊するとは思わなかった。1991年のソ連崩壊、歴史は転換するときには本当にドラスティックなものだということを実感した。次はどこか…

2002年11月記

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