中国反逆者列伝

中国反逆者列伝
荒井利明 平凡社新書  2002年11月
ISBN:4-582-85160-6  720円

はじめに
1.陳勝・呉広
2.司馬遷
3.王莽
4.安禄山
5.海瑞
6.鄭成功
7.洪秀全
8.譚嗣同
9.秋瑾
10.孫文
11.張学良
12.胡風
13.彭徳懐
14.毛沢東
15.林彪
16.王若水
おわりに−現代中国の反逆者

 はじめにも書いてあるが、ここで挙げられている16人は、近現代のものが多い。それも文化大革命がらみで、毀誉褒貶が激しく変化した人たちが多い。明代の反逆者・海瑞でさえ、毛沢東中国では政争の具として使われてきた。

 日本人を母に持つ鄭成功は、そうであるが故に簒奪王朝清に対抗し、明の幻想をおわなくてはならなかった。だが、台湾からオランダ勢力を追い出したということで、後世評価されることになる。

 張学良(張作霖の息子)は哀れである。1936年の西安事件の立役者である。そして、蒋介石に共産党軍と一致して抗日戦を構築するという口約束をさせたのである。だが、蒋介石に同行し南京に戻った彼は、当然のことながら弾圧され、以後半世紀に及ぶ幽閉生活を送る。晩年ハワイに住んだ彼は、帰郷(東北(満州))の意志を訪ねられると、「むろん帰りたい、だが時期尚早。」と答えたそうである。

 武骨・硬骨の軍人、彭徳懐も哀れである。「大躍進政策の失敗」を毛沢東に直言したために、左遷され、文革時に実質的に殺されてしまう。あまりにも毛沢東に忠実すぎた結果がこれだ。

 手持ちの類書に、「中国民衆叛乱史(全4巻)」(平凡社東洋文庫、1978年〜83年)、「裏切り者の中国史」(井波律子、講談社選書メチエ、1997年4月)がある。前者はおもに正史からの抜粋、後者で取り上げられているのは、伍子胥、戦国時代のテロリストたち、王莽、司馬い、王敦・恒温、安禄山、秦檜、呉三桂である。

2002年12月記

 9.秋瑾は武田泰淳の「秋風秋雨人を愁殺す」のモデルである。「武田泰淳全集 第9巻」(筑摩書房、昭和47年6月)に収められている。この巻の口絵写真は、秋瑾関係のものばかりである。なお、この巻には楽しい中国もの「十三妹」(しいさんめい)も載っている。これは「児女英雄伝」のヒロインと、「三侠五義」のヒーローを登場させ、さらに「儒林外史」からもネタを頂戴しているというものである。「児女英雄伝」と「三侠五義」は平凡社の中国古典文学大系の47巻(昭和46年7月)、48巻((昭和49年1月、初版第2刷)で持っているが、同43巻「儒林外史」(昭和40年代の本だが、1994年にも出されている、値段は当初の約4倍)は持っていなかったので、あわてて発注した。

2002年12月追記

中国反逆者列伝
故事成句でたどる楽しい中国史
奇才と異才の中国史

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