第一部−2− 宇宙の科学

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第4章 太陽系(12)
2.太陽系小天体−3−
c.流星
d.いん石
用語と補足説明
参考になるサイト

第4章 太陽系(12)

2.太陽系小天体−3−

c.流星

 地球の大気に細かい塵が飛び込んでくると、大気との摩擦で明るく輝く。これが流星であり、これは地球の大気内の現象である。このような塵がたくさん存在しているところと地球の公転軌道が交差していると、地球がそこに飛び込むと天のある場所(放射点)から流星が放射状に流れていくように見える。これが流星群である。だから、流星群に属する流星は本当は日が昇るころに一番多く見られるはずであるが、もちろん日が昇れば見えなくなるので、観測は夜半過ぎから夜明け前がチャンスといえる。なお、放射点から放射するように見えるといっても、流星の軌跡を元に辿るとある1点に集まるということで、放射点を見ていればたくさん見えるというものでもない。月などが出ていれば、そうした光に影響されない暗い部分を見ていた方がいいだろう。本当は放射点から平行に地球に飛び込んでくるはずであるが、放射状に見えるのは平行である鉄道の線路も、遠くを見ると一点に集まるように見えるのと同じようなものである。

 彗星はその軌道上にたくさんの塵を残しながら太陽のまわりを回っている。だから地球の軌道と彗星の軌道が交差するところがあると、1年のうちで決まった時期に流星群が見られることになる。代表的な流星群には、1月4日前後の「りゅう座ι(イオタ)流星群」(母彗星?)、5月5日前後の「みずがめ(イータ)流星群」(ハレー彗星)、8月12日前後の「ペルセウス座流星群」(スウィフト・タトル彗星)、10月20日前後の「オリオン座流星群」(ハレー彗星)、11月17日前後の「しし座流星群」(テンペル・タトル彗星)、12月14日の「ふたご座流星群」(phaethon?)などがある。

 なかでも、「しし座流星群」はテンペル・タトル彗星が回帰(近日点に戻る)したときに(回帰すれば必ずではないが)、非常に多くの流星が見られることで有名である。前回の回帰は1999年であったが、日本ではその2年後の2001年に「流星雨」といってもいいほどの多くの流星を見ることができた。

流星群の出現

 

1833年、しし座流星群による流星雨
http://www.arm.ac.uk/leonid/
2001年11月18日〜19日のしし座流星群、オリオン座を貫く大火球(大流星)も見られた。
http://www.azabu-jh.ed.jp/
club/tenmon/leonids2001/leonids2001.htm

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d.いん石(隕石)

 いん石は流星と違い、その起源の大部分は小惑星である。地球の軌道と交差する(近づく)軌道を持つ小惑星が、地球に衝突し、塵よりははるかに大きいので、大気との摩擦でも消滅せずに(燃え尽きずに)、地表に落下するのである。なかには、月起源、あるいは火星起源と思われるいん石も見つかっている。

 いん石を大きく分類すると、地球のかんらん岩に似ている石質いん石、鉄とニッケルの合金であるいん鉄(鉄いん石)、その中間である石鉄いん石にわけられる。石鉄いん石は非常に少ない。

 いん石の大部分は石質いん石で、この中ではケイ酸塩鉱物(ふつうの岩石をつくる鉱物)の丸い粒(コンドリュール)を含むコンドライトと、それを含まないエコンドライトがある。石質いん石の大部分はコンドライトである。コンドリュールは、高温で融けた状態にあったケイ酸塩の液滴が、無重量状態で丸い状態にあり、それが急激に冷えて固まってできたと考えられる、

 コンドライトはさらに酸化の程度に応じて細かく分類されるが、注目されるのは一番酸化されている炭素質コンドライトと呼ばれるものである。炭素質コンドライトは、太陽系の初期の段階の様子をよく保存しているといわれている。また炭素を有機物の形として含んでいることも特徴である。

 いん鉄は90%以上の鉄と数%のニッケル、そのたコバルトなどを含んでいる。いん鉄を切断して、切断面を酸で処理すると、ウィッドマン・シュッテッテン構造という特有な構造が見られる。これは金属結晶が肉眼で見えているのである。これだけの大きな結晶をつくるためには、100万年間で数℃というごくゆっくりゆっくりした割合で冷さなくてはならない。だから、イン鉄はかなり大きな微惑星〜惑星サイズの天体の中央部でできたと考えられる。その後その天体が破壊されたのだろう。

 いん石は、太陽系の天体をつくった物質がまだ残っていたものと考えられているので、地球や太陽系の歴史、あるいは地球の構造を研究するときの大きな手がかりとなる。じっさい地球のような惑星の核はいん鉄が集まって、マントルはコンドライトが集まってできたと考えられている。この件については地球の構造-2-を参照。また、地球誕生の項も参照。

 大きないん石が衝突すれば、クレーター(隕石孔)をつくるはずであるが、地球の表面には水星みたいにたくさんのクレーターは見られない。これはもちろん、地球の表面には大気や水があり、それらによる侵食作用が働くので、古いクレーターは侵食されてその形がわからなくなってしまうからである。

 しかし、アメリカのアリゾナ州にあるバリンジャーいん石孔のような見事なクレーターもある。このクレーターをつくったいん石本体は見つかっていないが、衝突の衝撃の際に発生する超高圧でできた鉱物(ステショバイトやコーザイト)が発見されている。

 また、最近では人工衛星からの観察により巨大なクレータの存在も明らかになっている。さらに、1978年に、中米ユカタン半島北部にある巨大クレーター(チクシュルーブ・クレーター)の存在が、重力異常の分布によって確実視されるようになった。おそらく直径180kmのクレーターが海底に埋まっていると思われる。このクレーターをつくったいん石は大きさが10km程度で、6500万年前に落下したと考えられている。そしてこのいん石の衝突こそが、中生代に栄えていた恐竜(やアンモナイトなど)の絶滅を招いたと思われている。また、日本にも数少ないがクレーターは存在している。

 2013年2月15日、ロシア中央部に隕石が落下して、負傷者1000名以上という被害をもたらした。

炭素質コンドライト。1969年2月にメキシコに落下したアレンデいん石。:東京大学総合研究博物館
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/
DM_CD/DM_CONT/INSEKI/HOME.HTM
隕鉄、きれいなウィッドマン・シュッテッテン構造が見られる。:東京大学総合研究博物館
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/
DM_CD/DM_CONT/INSEKI/HOME.HTM
世界のクレーターの分布:JAXAオンライン・スペースノート
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/traces_of_meteor.html
バリンジャーいん石孔
http://www.barringercrater.com/science/

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用語と補足説明

流星の発光典型的な彗星の塵の大きさは0.1mm〜1mm程度で、これが11.2km/s〜72km/sで地球大気に突入する。この高速の粒子が大気上層(100km以上の高さ、この付近の大気は非常に希薄である)に存在している窒素、酸素の分子・原子と衝突してそれらを蹴散らし(大気を切り裂き)、それら蹴散らされた分子・原子がさらに周辺分子・原子と衝突し高温状態となってまれに高度80kmに「到達する流星の塵もあるが、その場合は流星前面の大気が圧縮・加熱(断熱圧縮)されて、プラズマ状態になり発光する。いずれにしても、流星塵は加熱されることによって蒸発してしまうが、ごくまれに地上にまで到達することがあり、それがいん石(隕石)である。ただし、いん石となるようなものの起源は小惑星であることが多い。



流星の発光のメカニズム:円筒が発光している部分。直径は数mm以下。
「禁制線発光」とは、励起された中性酸素原子はが平均0.7秒後にエネルギーを光として再放出する光。
地上では0.7秒以前(発光前に)に他の分子と衝突してしまうために、この発光は大気が非常に薄い上空でないと見られない。
すばる望遠鏡のページ(2007年9月10日)

南極いん石日本は地球表面に対する面積が小さいので、当然そこに落ちる隕石の数も少ない。しかし、日本は世界最大のいん石保有国である。もちろん、日本国内で発見されたものは少ない。しかし、南極調査の際に、いん石がたくさん集まる場所を見つけたのだ。中には月起源のものもある。詳しいことは、南極隕石研究センター国立極地研究所参照。

日本のクレーター長野県上村(南アルプス南部の御池山(おいけやま)付近の半円形の地形、長野県王滝村の「シンガハタの池」がクレーターといわれている。四国の高松付近の重力異常から、その地下に巨大なクレーターがあるという説もあるが、疑問点も多い。

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巨大いん石衝突の衝撃宇宙から飛び込んでくるいん石の衝突の速さはどの程度なのだろう。逆に考えると第2宇宙速度(地球表面では11.2km・s-1)以上の速さで宇宙に投げ出さないと宇宙に戻ることはできない。だから、いん石は第2宇宙速度以上の速さで激突する。また、地球軌道上での太陽からの脱出速度は(無限遠から太陽に向かって落ちたとしても)、その速さは42km・s-1である。地球の公転の速さは30km・s-1なので、正面衝突したとすると72km・s-1となる。

 ここで、ツングース級の事件を起こした原因がいん石の落下だとすると、その直径は100m程度と想像される。いん石の密度を3×103kg・m-3とすると、質量は密度×体積=3×103kg・m-3×(4/3)・π・5033=1.6×109kg。衝突のエネルギー=(1/2)×質量×(衝突したときの速さ)2なので、速度をどう見積もるかによって値がまったく異なってしまう。ここでは、とりあえず地球の公転の速さ30km・s-1を使ってみる。すると衝突のエネルギーは、6.8×1017Jとなる。地震のエネルギーと比べてみよう。

 さらに恐竜絶滅を招いたいん石の直径は10km程度であったと考えられている。すると直径は上で計算したいん石(直径100m)の100倍だから、体積と質量は100×100×100倍=106倍(100万倍)。衝突の速度速さが上と同じだと、エネルギーも100万倍(6.8×1023J)。衝突の速さが2倍になると、エネルギーはさらにその4倍になる。

 6.8×1023Jのエネルギーは、広島原爆のエネルギー(20ktonで約8.4×1013J)の100億倍である。いかにすさまじいものであったかあるかがわかる。だが、見方を変えると、直径10kmといっても、直径12800kmの地球と比べたらとても小さい(1000分の1以下、体積(質量)では109分の1(10億分の1)以下)でしかないので、地球の運動に大きな影響を与えるものではなかった。長さ10mの大型バスに、体長1cmの昆虫が衝突した程度ということでしかない。

 しかし、再度見方を変えると、直径10kmは、我々人類が暮らしている対流圏全体の高さに匹敵するし、海の平均の深さの2倍以上の大きさでもある、人類が暮らしている、地球表層のとても薄い層からするとやはり大きい、逆にいえば人類が住んでいる環境は極めて脆弱、地球と比べたら比較にならないほど小さな隕石の衝突も、地球表層で暮らしている生物にとっては壊滅的な被害をまねくものである。

 直径100mクラスのいん石の衝突は、数世紀に1回くらいの割合、それが都市の近くに落下するのは10万年程度に一回といわれている。都市近くに落下したら大惨事になる。この件については、地球に接近した小天体の一覧表日本スペースガード協会のホームページ参照。

ロシア中央部へのいん石落下:2013年2月15日、ロシア・ウラル地方のチェリャビンスク州付近に落下。空中で爆発した模様。衝撃波・爆風で負傷者1000人以上。住宅にも被害が出た。

いん石が落下して方向。google mapに加筆。 ヨーロッパの気象衛星が捕らえた大気圏に突入するいん石。
http://www.esa.int/Our_Activities/Operations/Russian_asteroid_strikeに加筆。
いん石の飛跡(いん石雲)。
http://mainichi.jp/graph/2013/02/15/20130215k0000e030222000c/001.html
いん石の破片で氷に穴が開いた?
http://mainichi.jp/graph/2013/02/15/20130215k0000e030222000c/001.html
いん石落下のイメージ。超音速で待機に突入するために衝撃波が生じ(この衝撃波が地表とぶつかったところで被害が出た)、さらにいん石の前面を空気を圧縮する(断熱圧縮)するため高温となる。この熱と、大気の抵抗(大気にぶつかった衝撃)でいん石は爆発した。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130216ddm003070048000c.html
このいん石の軌道。遠日点は火星と木星の間、近日点は金星近くの軌道を持った小惑星だとわかる。
http://blogs.nasa.gov/cm/blog/Watch%20the%20Skies/posts/post_1360985685055.htmlをもとに作成。

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このページの参考になるサイト

日本惑星協会:http://www.planetary.or.jp/

宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/note_j.html

The Nine Planets(英語):http://www.nineplanets.org/(日本語に訳したサイトもあるが更新が遅れ気味)

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