第一部−2− 宇宙の科学

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第5章 恒星
4. 恒星のスペクトル
5. 恒星のスペクトル型
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第5章 恒星

4. 恒星のスペクトル

 太陽の光をプリズム(あるいは回折格子)に通すと、虹の七色にわかれる。恒星からの光も同様である。この色の系列をスペクトルという。色は紫、藍、青、緑、黄、だいだい、赤と中間の色も含めて連続的に並ぶが、これは光の波長の順(短い方から長い方へ)の順でもある。だから、スペクトルとは光(波)を波長ごとに分解したときの成分ととらえることもできる。プリズムを使ってスペクトルを観察したのは、ニュートンが最初(1666年)といわれている。

 なお、光は電磁波の一種で、電磁波は波長により下のように波長の長い方から、電波、赤外線、可視光線(光)、紫外線、X線、γ(ガンマ)線と呼ばれる。また下の図で、波長の単位としてオングストロームを使っているが、1オングストロームは10-10m(0.1nm(ナノメートル)である。ヒトの目には380nm〜770nm(0.38μm〜0.77μm)程度の波長を感じることができる。この波長帯が「可視光線」である。どの波長付近がどのような色として感じるかは下の図を参照。

 なお波長が380nm〜770nmの電磁波が可視であることは偶然ではなく、460nmにピークを持つ太陽光のもとで進化してきた結果であるわれわれ人類(ヒト)にとっては必然なのだろう。そういう意味では、生物の中にはヒトにとっては紫外、赤外の領域にある電磁波でも、比較的太陽の輻射エネルギーのがまだ強い波長帯、例えば紫外線では300nm程度まで、赤外線では1400nm程度までが見える(利用できる)ものがいても不思議ではない。


http://www.colorado.edu/UCB/AcademicAffairs/ArtsSciences/physics/PhysicsInitiative/Physics2000/quantumzone/


http://www.astro.uiuc.edu/~kaler/sow/spectra.html

 下は太陽のスペクトルである。これをよく見ると、ところどころに黒い線(暗線)が入っているのが見える。これをフラウンホーファー線という。この1本1本の黒い線は、太陽の大気の中の特定の原子(やイオン)に対応している。太陽の大気中の原子(やイオン)が特定の波長の光を吸収するためにできるのである。恒星からの光のスペクトルの中にも、このようなフラウンホーファー線が見られる。だから、この暗線(フラウンホーファー線)の位置によって、逆に太陽(恒星)の大気中に、どのような原子が存在しているかがわかる。実際、ヘリウムは地球よりも早く、太陽の大気中でその存在が確認された。


JAXA(宇宙航空研究開発機構)
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/doppler_fraunhofer.html

 しかし、このスペクトルの暗線の何が目立つのかは、その恒星の大気がどういう状態であるかによる。つまり、原子の存在比ではない(存在比が多いほど目立つわけではない)。スペクトルの特徴は、恒星の化学組成より、恒星の表面温度に大きく依存する。

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5.恒星のスペクトル型

 このようなスペクトル(の中の輝線・暗線)の特徴(スペクトル型という)によって、下のように恒星を分類することができる。

スペクトル型 特徴(表面温度、目立つ輝線・暗線) 恒星の色 代表的な恒星
O型 表面温度5万K。電離ヘリウム。高電離の酸素、窒素、炭素。 青白  
B型 表面温度2万K。中性ヘリウム。 青白 リゲル、スピカ
A型 表面温度1万K。水素。 シリウス、ベガ
F型 表面温度7000K。電離金属、カルシウム。 薄黄 カノープス、プロキオン
G型 表面温度6000K。中性金属。カルシウム。水素は目立たない。 太陽
K型 表面温度4000K。カルシウムが幅広い。中性金属が重なる。 だいだい アルデバラン、アークツルス
M型 表面温度3000K。酸化チタンなどの分子の暗線。 アンタレス、ベテルギウス

※ スペクトルの特徴は理科年表2004(丸善)、天文の事典(平凡社)による。

 このように、スペクトル型は表面温度とともに、恒星の色とも深く関係している。太陽は近すぎて色がよくわからないが、遠くから見れば黄色に見えるG型の恒星である。また、太陽の絶対等級は5等級であった。

 恒星の色は、その恒星が出している光の波長の中で一番強い波長によって決まる。表面温度が高くなるほどその波長は短く(青白っぽく、紫っぽく)なり、表面温度が低いほどその波長は長く(赤っぽく)なる。

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用語と補足説明

暗線と輝線太陽(電球)の光をプリズム(回折格子)に通すと、連続した色に分離する(下図(1))。その前にナトリウムのガスがあると、ある特定の波長が吸収され、スペクトルの中に暗線が現れる(下図(2))。このナトリウムガスを高温に熱すると、暗線だった部分(波長)が輝線となって現れる(下図(3))。ナトリウムの場合、この暗線(輝線)は波長は589.1nm(ナノメートル)と589.6nmの2箇所に現れる。なお、nm(10-9m)の“n”(ナノ)という接頭語はこちらを参照

 水素原子でこの様子を見てみる。水素原子は原子核(陽子1つ)のまわりを電子(1つ)が回っているという、元素の中では最も簡単な構造をしている。そして、この電子は決まった軌道しかとることができない。そのエネルギーが一番低い状態が一番内側の軌道である。この水素原子にエネルギーが与えられると、水素原子は特定の波長の光を吸収する。具体的には電子が外側の軌道に移り変わる(“遷移”(せんい)という)。その一番近い状態(第一励起状態)に遷移するとき、656.3nmの波長の光を吸収する。こうして、656.3nmが暗線となる。逆にこの電子が一番内側の軌道に戻るときは、656.3nmの波長の光(赤)を放射する。このスペクトル線をHαと呼ぶ。

 もっと多くのエネルギーを与えられればより外側の軌道に遷移し、Hβ、Hγというスペクトル線を吸収・放射する。

スペクトル型スペクトル型は最初、Aから順にB、C…となっていた。その後の研究によって、意味のない型も出てきて、また、恒星の表面温度や色の順に現在のように並べることになったので、順番に規則性がなくなってしまった。憶え方は、 Oh Beautiful And Fine Girl Kiss Me ! である。スペクトル型は他に、R型、N型、S型を加える場合もある。

恒星の色と表面温度恒星が出している光の中で一番強い光の波長と表面温度(絶対温度)は反比例する。これをウィーンの変位則(ウィーンの変位法則)という。ウィーンの変位則はこちらも参照こちらも参照

 λmax・K=2900   λmax(ラムダ・マックス):最大強度の光の波長(μm)  T:表面温度(K)

 このウィーンの変位則から、恒星(や太陽)の表面温度を求めることができる。

 

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