第一部−1− 宇宙の歴史

 

このページの目次
第1章 ビッグバン
1. ビッグバン−宇宙のはじまり−
a.ビッグバン
b.ビッグバンの証拠
c.膨張する宇宙
d.宇宙の果て
e.オルバースの逆説
2. 宇宙の晴れ上がり
3. 宇宙の未来は?
a.宇宙の未来
b.宇宙の膨張は加速している?
用語と補足説明
参考になるサイト

第1章 ビッグバン

1.  ビッグバン−宇宙の始まり-

a.ビッグバン

 宇宙は一点から始まった。その始まりは、いまから140億年くらい前に起きたビッグバン(大爆発、big bang)といわれている。そして宇宙は現在に至るまで膨張を続けている。初め、超高温・超高密度だった宇宙(火の玉宇宙)は膨張したため、今日の冷えて空疎な空間になってしまった。このビッグバンによって、“空間”ができたばかりか、“時間“もここから始まったと考えられている。このビッグバン・モデルは1948年、アメリカのG.ガモフ(ロシア→アメリカ、1904年〜1968年)によって提唱された。

 だから、ビッグバン以前はどうだったのかという疑問は、意味がないというか、答えようがない。何もなかった、それよりいまのわれわれの宇宙とは何も関係がないという方がいいかもしれない。

 宇宙が誕生してから100分の1秒後ころは、大量の光子(フォトン)、ニュートリノ、電子、少量の陽子、中性子がごったまぜになっていた。さらに宇宙が膨張して冷えていくと、水素やヘリウムの原子核ができてくる。このへんの道筋は、第2章2.a.元素の誕生参照。現在の宇宙の水素とヘリウムの割合は7:3くらいと考えられている。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/shikumi/j/shi02_j.html

 現在知られている4つの力(重力、電磁気力、弱い力(弱い核力)、強い力(強い核力))が分離したのも、この宇宙のごく初期のころのことだといわれている。まず、ビッグバンの10-44秒後(宇宙の温度は1032Kくらい)に重力が別れ、ついで10-38秒後(宇宙の温度は1029K)に強い力が別れ、最後に(10-11秒後、1015K)に弱い力と電磁気力が別れ、今日の宇宙のようになったと考えられている。これらの力については、高エネルギー加速器研究機構のサイトを参照。
http://www.kek.jp/kids/class/particle/force.html

 これらの4つの力を統一的に説明しようとするのが、超大統一理論である(もちろん、まだ未完成)。

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b.ビッグバンの証拠

 宇宙のあらゆる方向から、ほとんど同じように3K(3ケルビン、正確には2.735K=-270.425℃)の温度の物体が出す電波が観測される(1965年アメリカ・ベル研究所のA.ペンジアス、R.ウィルソンが初めて観測)。これを宇宙背景マイクロ波放射(宇宙背景放射)という。この電波は、すごく小さかった初めの火の玉宇宙を満たしていた超高温の物体の温度が高いほど波長に短い光を出す)が、宇宙が現在まで膨張して冷えた結果波長が間延びして電波になり、その波長が3Kに相当するといわれている。昔の火の玉宇宙の名残りなのである。つまり、現在の冷えた宇宙は約3Kの温度で、その温度の物体が出す電磁波といってもよい。

 1989年にアメリカが打ち上げた宇宙背景放射観測衛星COBEは、この電波が方向によってごくわずかにゆらぎがあることを発見した。このゆらぎはさらに2003年には人工衛星WMAPによりさらに詳しく調べられた。ゆらぎは宇宙の密度のゆらぎを意味する。そして、このゆらぎが銀河などに成長するもととなるのだ。しかし、なぜゆらぎができるのかについては、まだよくわかっていない。もっともゆらぎといっても、角度で10°離れて10万分の1程度のものである。だから、逆になぜ宇宙はこのように均一で一様なのかの方がもっと謎かもしれない。

※ 初期宇宙のゆらぎについては、欧州宇宙機構(ESA)の探査機Planck(2010年〜2013年運用)によってさらに詳しく調べられた。結果はこちらを参照

 この宇宙の一様性については、宇宙の初期に急激な加速膨張があったということにすれば、ある程度解決できることがわかった。この急激な加速膨張を唱える説をインフレーション理論という。

宇宙の歴史の概念図:https://map.gsfc.nasa.gov/media/060915のテキストなし図に加筆。
宇宙の晴れ上がりについては(2)参照。

宇宙背景マイクロ波放射と宇宙の年齢については、下のサイトを参照。
http://www.astroarts.co.jp/news/2003/02/12wmap/index-j.shtml

インフレーション理論については、その提唱者の一人佐藤勝彦教授のインタビュー参照。
http://www.athome-academy.jp/archive/space_earth/0000000243_01.html

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c.膨張する宇宙

 1929年、アメリカのE.ハッブル(1889-1953)は、遠い銀河ほど速い速さでわれわれから遠ざかっていることを発見した。さらに、遠ざかる速さ(後退速度)は、われわれからの距離に比例することも見つけた。これをハッブル−ルメートルの法則という。銀河団とその後退速度のグラフを下に示す。このグラフの作成の仕方についてはこちらも参照

 ここで注意しなくてはならないのは、遠い銀河のすべてがわれわれから遠ざかっていても、それは別にわれわれが「宇宙の中心」にいるということではない。よくいわれるたとえは、われわれの宇宙が風船の表面(の2次元の世界)で、銀河はその表面の模様だとする。すると、風船を膨らませると、どの模様から見ても、別の模様は遠くにあるものほど速く遠ざかるように見える。われわれの宇宙は3次元的な広がりがあるのでイメージしにくいが、原理は同じである。どうもわれわれの宇宙も、銀河というものを含みながら、空間そのものが膨張しているらしい。こうした宇宙には特別な場所がないという考えを宇宙原理という。

 つまり、われわれの宇宙は、ビッグバン以後まだ膨張を続けていると思われる。だから、逆にこのハッブルが見つけた宇宙の膨張から、宇宙はビッグバンで始まり、それ以後今日まで膨張を続けていると考えられるのだ。

 遠い銀河の後退速度がわれわれからの距離に比例するという、ハッブルの法則を式に書くと下のようになる。

 v=Hr v:後退速度 r:われわれからの距離 H:ハッブルの定数

 いま、ハッブルの定数を100万光年につき20km/sとする。すると、われわれから100万光年彼方の銀河は20km/s、200万光年彼方の銀河は40km/sでわれわれから遠ざかることになる。さらに、1000万光年彼方の銀河は200km/s、1億光年彼方の銀河は2000km/s(2×103km/s)、10億光年彼方では2×104km/s、100億光年彼方では2×105km/s、そしてその1.5倍の距離である150億光年彼方の銀河は、われわれから3×105km/s(秒速30万km)で遠ざかることになる。3×105km/s(秒速30万km)は、光の速さ(光速)そのものである。

 ※ 上の1億光年につき2280km/sを使うと、132億光年彼方が光速で遠ざかるということになる。

 時間を逆転して考えると、150億光年彼方が光の速さで近づいてくるのだから、150億年前には宇宙全体がわれわれのところ、つまり1点に集まってしまう。

 別な場所で見ると、例えば1億光年彼方(1光年9.47×1012kmの1億(108)倍)は2×103km/sで遠ざかっているのだから、逆に時間を逆転して、その速さで近づくとすると、(9.47×1020km)÷2×103km/s=4.74×1017秒(1年=3.16×107秒なので約150億年)かかる。100万光年(1光年9.47×1012kmの106倍)の距離では、上と同じように(9.47×1018km)÷20km/s=4.74×1017秒(150億年)。

 つまり、われわれからどの距離の彼方も、時間を逆転させると150億年前にはわれわれのところ、この1点に集まってしまうことがわかる。だから、これらの計算に出てくるハッブルの定数の逆数が、宇宙の年齢を示しているということになる。

 このようにハッブルの定数は、宇宙の年齢を決める重要な数値である。だが、その数値の確定は現在でも難しい。遠い天体ほど、その距離、つまり後退速度の測定が難しいのだ。最近ではハッブルの定数は100万光年につき20km/sより少し大きいらしいことがわかってきた。そして、この宇宙の年齢は137億年±2億年という値も出ている。ハッブル定数についてはこちらも参照

 さらに最近では、宇宙の年齢として138億年という値も出ている。

※ 上のグラフの値を使うと、宇宙の年齢は132億年ということになる。

国立天文台・天文ニュース(621)(2003年2月27日)
http://www.nao.ac.jp/nao_news/data/000621.html

AstroArts
http://www.astroarts.co.jp/news/2003/05/01first_stars/index-j.shtml

ハッブルについてはJAXAのスペースノートのハッブルの項を参照
http://spaceinfo.jaxa.jp/note/kagaku/j/kag13_j.html

宇宙の年齢は138億年についてはアストロアーツ2013年3月22日
http://www.astroarts.co.jp/news/2013/03/22planck/index-j.shtml

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d.宇宙の果て

 上に書いたように、ハッブルの定数を100万光年につき20km/sとすると、150億光年の彼方は光速でわれわれから遠ざかっている。この宇宙はなぜか理由はわからないが、光速(正確には真空中の光速)より速いものはないという宇宙である。光ばかりか、光もその一部である電磁波、あるいは万有引力など、光速で伝わるがそれ以上ではない。

 つまり、それ以上遠いところからは、光、電波、万有引力などいっさいの情報は永久にわれわれのところには届かない。つまり、われわれにはまったく影響を及ぼさない(関係がない)。そこで、この宇宙が光速で後退する距離を「宇宙の果て」とか、「宇宙の地平線」といったりする。

 宇宙の年齢が上のように138億年ということになれば、宇宙の果てまでの距離も138億光年ということになる。なお、宇宙の果てについてはこちらも参照

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e.オルバースの逆説

 もし宇宙に銀河(恒星でもよい)が、一様に分布しているとする。ここで、ある範囲(地球を中心とする球とする)の中にある銀河の数を数える。宇宙の半径の2倍にすると、体積は23倍=8倍、半径が3倍になれば33=27倍、つまり、ある範囲の宇宙の体積は、考える半径の3乗に比例することになる。ということは、その中に含まれる銀河の数も、宇宙の大きさ(半径)の3乗に比例してどんどん増えていく。

 一方、銀河までの平均距離は、宇宙の半径を2倍、3倍と広げていけば、そのまま2倍、3倍になる。

 では、一つの銀河から来る光の強さはどうだろう。距離が2倍、3倍になると、同じ光の量で照らさなくてはならない面積は22=4、32=9と、距離の二乗に比例する。一定の面積(単位面積)で考えると、その面が受け取る光の量は1/4、1/9と、距離の二乗に反比例することになる。

 つまり、宇宙の半径を2倍にすると、その中に含まれる銀河の数は8倍、しかし、銀河一つから来る光の量は1/4倍、両方を同時に考えると、地球にやってくる光の量は8倍×1/4倍=2倍。同じように、宇宙の半径を3倍にすると、その中に含まれる銀河の数は27倍、銀河一つから来る光の量は1/9倍、地球が受け取る光の量は27倍×1/9倍=3倍となる。

 これから、地球が受け取る銀河からの光の量は、銀河の数は半径の3乗に比例し、一つの銀河から来る光の量は半径の2乗に反比例するので、結局、距離に比例することになる。これは、宇宙の半径を2倍、3倍とすると、空の明るさも2倍、3倍になるということである。

 つまり、宇宙が無限に大きいと、空も無限に明るいことになってしまう。このことを最初に指摘したのは、1826年、ドイツの天文学者オルバースであった。実際の空は無限には明るくない。だからこれをオルバースの逆説(オルバースのパラドックス)という。

 実際の空が無限に明るくないのは、<d.宇宙の果て>で書いたように宇宙は無限ではなく、有限だからである。

 もし、宇宙は無限に広いのだが、光を吸収する物質がたくさん存在するので、遠くの光は届かないと考えるとどうだろう。じつは、もし途中で光を吸収するものがあるとしても、その物質は最終的には熱平衡に達し、吸収したエネルギーと同じエネルギー(光)を出すことがわかっている(キリヒホッフの法則)。つまり、結局は宇宙を無限とすると、夜空は無限に明るいことになってしまう。まだ平衡に達していないと考えると、こんどは宇宙の歴史は平衡に達するほどの時間がたってはいない、つまり宇宙には年齢(無限の歴史はない)があることになる。

 現在では、宇宙に存在する銀河の平均密度と光度、それから計算できる空(夜空)の明るさは、宇宙を<d.宇宙の果て>で書いたような大きさとすると、ほぼ実際の夜空の明るさと合うといわれている。

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2. 宇宙の晴れ上がり

 宇宙の温度が高いときは、原子核や電子はばらばらに飛び回るプラズマ状態であった。自由に動き回る電子(自由電子)は光を反射する(金属と同じ、金属も自由電子があるので光を反射する、また自由電子があるので電気を伝える性質がある)。しかし、ビッグバンから30万年くらいたつと、宇宙の温度は4000K(ケルビン)から3000Kくらいまで下がる。このくらいの温度になると、それまで自由に飛び回っていた電子が、水素やヘリウムの原子核に捉えられて、水素原子やヘリウム原子ができる。すると、それまで電子によってじゃまをされていた光子がまっすぐに進める(直進できる)ようになる。これが宇宙の晴れ上がりである。宇宙が透明になったということである。

 この水素原子や、ヘリウム原子から原始銀河、さらには恒星や惑星が誕生していくことになる。

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3. 宇宙の未来は

a.宇宙の未来

 われわれの宇宙はこのままずっと膨張を続けていくのだろうか。それともどこかで反転して、また1点に戻るのだろうか(“ビッグクランチ”という)。これは、この宇宙にどのくらい物質(質量)があるかで決まる。物質がたくさんあれば、その引力(万有引力)により、だんだん膨張にブレーキがかかり、いつかは収縮に転ずる。でも、物質があまりないと、膨張にブレーキをかける力が足りないので、いつまでも膨張を続ける。われわれから見ると、だんだん遠い銀河から視界からはずれて、だんだんとわれわれはまわりには寂しくなっていき、最後にはひとりぼっちになってしまうことになる。

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b.宇宙の膨張は加速している?

 宇宙にはその中の物質の質量による引力のため、膨張しているといってもその膨張はだんだん減速しているだろうと思われていた。ところがどうもそうではないらしい。最近の観測からは、宇宙の膨張は加速していることがほぼ確実にいえるようになった。この宇宙の膨張の加速には正体不明のダークエネルギーが関係しているという。これについては、「第7章 宇宙の構造(3)」も参照。

 では、なぜ加速しているのだろう。これについては今のところよくわかっていない。

国立天文台・天文ニュース243(1999年3月11日)、国立天文台・天文ニュース432(2001年4月19日)参照。
http://www.nao.ac.jp/nao_news/mails/000243.txt
http://www.nao.ac.jp/nao_news/data/000432.html

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用語と補足説明

ガモフ:G.ガモフ(ロシア→アメリカ、1904年〜1968年)。ビッグバンの提唱ばかりではなく、生物のDNA分子4種のうち3つ(3文字)で遺伝情報を表わしていることも示唆した。「不思議の国のトムキンズ」(1939年)などの、相対性理論の一般向け解説書の著者としても有名。「不思議の国のトムキンズ」の漫画「トムキンスさん」(古川タク作画+ジョージ・ガモフ原作 白揚社 2002年)は、こちらを参照

K(ケルビン):いわゆる絶対温度。読みはケルビン。℃(度、セルシウス度)との関係は、0K=−273.16℃、273.16K=0℃。物理学者、ケルビンの名を記念している。

ケルビン:L.ケルビン(イギリス、1824年〜1907年)。もともとはウィリアム・トムソンという名だったが、物理学上の功績を認められて爵位(ナイト)が与えられ、ケルビンと名乗るようになった。熱力学、電磁気学などで巨大な足跡を残した。ただし、ケルビンはまったく新しい考え方・法則を発見するというタイプという学者ではなく、発見されている法則を応用することに長けているというタイプの学者であったという評価もある。日本の物理学の草分け田中館愛橘(たなかだて あいきつ,、1856年〜1952年)もケルビンの弟子である。

 巨人ケルビンも地球科学の面では、その年齢の見積もり(火の玉地球が冷えて今日に至ったとして、せいぜい数千万年〜数億年という値を出して、当時の地質学者たちから反発を受けている。当時は地球内部にウランやトリウム、さらにはカリウム40といった放射性同位元素(放射性同位体)があり、それが熱を出すことは知られていなかったので無理はないが…。

 なお、ケルビンは地球の生命の起源について、生命は隕石に付着して地球に持ち込まれたという、一種のパンスペルミア説を唱えている。

ウィーンの変位則:物体が出す放射エネルギーの最大強度の波長は、その物体の表面温度に反比例する。つまり、温度が高い物体ほど、波長の短い電磁波で多くのエネルギーを出す。式で書くと、最大強度の波長λmax(μm)、表面温度T(K)とすると、λmax・T=2900(2897.8)となる。なお、λはラムダと読む(ギリシャ文字)。maxは最大の意味。(数値は「ネットで百科」日立システムアンドサービス社)。ウィーンの変位則はこちらも参照こちらも参照

光と電波の波長:光も電波も同じ電磁波である。電磁波の波長により、短い方からγ(ガンマ)線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波と区分する。理科年表の表(2003年版ではp.427)などを参照。

可視光線:電磁波のうちヒトの目が感じる波長領域(波長0.38μm〜0.77μm)を、可視光線という。太陽はこのへんの波長の電磁波を一番強く放射している(一番強いのは0.46μm)。つまり、ヒトの目がこの波長領域に感度を合わせていることは、太陽の光のもとで進化してきた生命であるという、必然的な結果かもしれない。(数値は理科年表2003(丸善)から)

μm(マイクロメートル):μは10-6の接頭語。つまり、1μmは10-6m(1mの100万分の1、1mmの1000分の1)。ちなみに、m(ミリ)は10-3(1000分の1)を表わす接頭語

接頭語:3桁刻みで大きい方は1024まで、小さい方は10-24まで定められている。 大きな数字(10のべき乗表示)とその計算法も併せて別表参照

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銀河:恒星の大集団。われわれ太陽(系)を含む銀河を、とくに銀河系という。銀河はいくつかの銀河が集まって集団を作る傾向があり、それを銀河群という。また銀河群は集団をつくり、それを銀河団という。銀河団はさらに超銀河団という構造を作る。詳しくはこちらを参照

遠い銀河までの距離(1):銀河の平均の明るさは、絶対等級で−21等であることがわかっている。だから、見かけの等級と比較することにより、その銀河団までの距離を求めることができる。詳しくは別項参照。ハブルはこうして遠い銀河の後退速度を求めた。もう一つ、I型超新星の明るさはほぼ一定であるということから、その超新星を含む銀河までの距離がわかる場合がある。これについては別項参照

遠い銀河までの距離(2):ハブルの法則が成り立つとしたら、逆に後退速度がわかれば、その銀河までの距離がわかることになる。後退速度は光のドップラー効果から求めることができる。ちょうど救急車のサイレンの音が、近づいてくるときは音程が高く聞こえ(音波の波長が短くなる)、遠ざかるときは音程が低く聞こえる(音波の波長が長くなる)。これと同じように、光源(銀河)が近づいてくるときは光の波長が短く(色では青い方にずれる)、光源(銀河)が遠ざかるときは光の波長が長く(色では赤い方にずれる)なる。このずれは、後退速度に比例するので(厳密には光速に対してあまり速くないとき)、光の波長のずれから後退速度がわかり、その後退速度から距離がわかるのである。

 本来の波長λ(ラムダ)、ずれをΔλ(デルタ・ラムダ)、われわれに対する速度v、光速cとすると Δλ/λ=v/c となる。ただし、vが光速に対して無視できない場合はΔλ/λ=z として、

 つまり、

 この式の別の形はこちらを参照。また、恒星から遠い銀河までの距離の求め方のまとめはこちらも参照

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光年:秒速約30万km(3×105km/s)の光が1年(約3.16×107秒、π×107秒と憶えるとよい)かかって進む距離。すなわち、約9.47×1012km(9.47兆km)。

光速:299792458m・s-1(2.99792458×108m・s-1、約秒速30万km)(数値は理科年表2007(丸善)から)

万有引力:理由はわからないが、質量があると引力がはたらく。これを万有引力という。アイザック・ニュートン(イギリス、1642年〜1727年)がきちんと明らかにした。それによると、二つの物体はお互いに同じ大きさの万有引力で引き合う。その力の大きさは二つの物体の質量の積に比例して、二つの物体の距離の二乗に反比例する。どんなに遠くてもはたらく力なので、宇宙では重要な役割を果たしている。

ハッブル−ルメートルの法則長い間ハッブルの法則とされていた。しかし、ハッブルの1929年に先立つ1927年に、ベルギーのルメートルがアインシュタインの一般相対性理論と観測事実から宇宙が膨張していることを明らかにして、“ハッブルの定数”まで求めていた。ただ、この論文はベルギーの学術雑誌にフランス語で発表されたために注目されることはなかった(英訳されたのは1931年)。しかし、2011年になり、その英訳にはルメートルもハッブルの定数を求めていたことなどが削除されていたことがわかった。削除したのはルメートル本人で、「すでにハッブルがハッブル定数を求めた論文を1929年に出版しているので、ほとんど同じデータを使った自分の結果を今再度掲載しなくてよい」と考えて削除したことが明らかになった。こうした経緯から、2018年の国際天文連合で、従来のハッブルの法則を、ハッブル−ルメートルの法則と呼ぶことが決定された。

ルメートル:ジョルジュ・ルメートル(1894年〜1966年)はベルギーのカトリックの司祭にして天文学者。上に書いたようにハッブルに先駆けて膨張宇宙論を唱えた。

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このページの参考になるサイト

JAXAスペースノート「宇宙のしくみ」http://spaceinfo.jaxa.jp/note/shikumi/j/shi_j.html(つながりません)

JAXA:「宇宙なぜなぜ大辞典」(2008年3月現在、「キッズ★ギャラクシー」(http://www.isas.jaxa.jp/kids/)からは入れません。)

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