第二部−3− 大気と海の科学

第18章 海水の大循環

目次
1. 海水の大循環
2. 日本付近の海流
a.黒潮
b.親潮
用語と補足説明
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1.海水の大循環

 海水も大気と同様に、低緯度から高緯度へと熱を運ぶ役割を果たしている。だから高緯度で冷やされた海水が沈み、それを補う形で、下の図のように表面では低緯度から高緯度へと海水が流れるはずである。しかし実際には、海水の動きは地球上の大規模な風(大気の大循環)と、地球の自転によるコリオリの力の影響を受けるので、下の図とは違ったものになっている。、

 地球の低緯度には東よりの風である偏東風、中緯度には西よりの風である偏西風が吹いている。この風が海面を吹くことによって海水を押すことになる。しかし海水を押す力は風の向きと同じにはならず、自転によるコリオリの力のために風に対して北半球では直角右向き(南半球では直角左向き)となる。このために両者に挟まれた地域では両側から押されることにより海水面が1〜2m程度盛り上がる(下図青の斜線部)。

 大気でいえばこの部分が高気圧となり(圧力傾度を生じ)、そこからまわりに海水が流れることになるが、コリオリの力のために全体として北半球では右巻き、南半球では左巻きの流れとなる。

 だが実際の海洋、とくに北半球の海洋は大陸で区切られている。この場合は海水が地球の自転に遅れる形で西岸に押しつけられ、大洋の西側の海流が強くなる。これを西岸強化という。北太平洋の黒潮、北大西洋の北大西洋海流(メキシコ湾流)がそれに当たる。

 実際の海流(海水面近くの流れ)と鉛直方向の環は下のようになっている。鉛直方向の循環は、高緯度で冷やされ、また海氷ができることによって塩分が濃くなった(密度が高くなった)海水が潜り込んでいることがわかる。また、鉛直方向の動きは水平方向の動きに比べて大変に遅い。表面近くの海水が潜り込む場所は決まっている。それは北大西洋と南極近くである(下図の黄色い丸)。こうした海水の鉛直方向の大循環は2000年程度の時間をかけて行われていると考えられている(「海のなんでも小事典」、道田豊他、講談社ブルーバックス、2008年3月)。


1.黒潮 2.親潮 3.北太平洋海流 4.北赤道海流
5.赤道反流 6.南赤道海流 7.南インド海流 8.南大西洋海流
9.北大西洋海流 10.南極海流 11.カリフォルニア海流
気象庁:http://www.data.kishou.go.jp/db/kaikyo/knowledge/kairyu.html

海水の大循環


ブロッカーモデルの改訂版:http://www.pik-potsdam.de/~stefan/thc_fact_sheet.html

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2.日本付近の海流

a.黒潮

 黒潮はメキシコ湾流と並ぶ世界有数の海流(暖流)で、強い流れの幅は100km以上、流れの速さは2m・s-1(オリンピッククラスの泳者の速さ)に達する。流量は5000万トン・s-1になり、これは世界最大のアマゾン川の500倍である。水温は20℃〜30℃、栄養塩・プランクトンが少なく透明度が高い。そのために黒く(藍色)見える。

 黒潮は日本付近で大きく蛇行することがある。このとき、黒潮と日本の間に冷水塊ができることがあり、漁業・気象に影響を与える。黒潮を偏西風、冷水の渦を低気圧、暖水の渦を高気圧と考えると、偏西風の蛇行と高気圧、低気圧の関係と似ていることがわかる。


黒潮の蛇行:気象庁
http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/shindan/sougou/html/2.2.2.html
1.非蛇行接岸型 2.非蛇行離岸型 3.大蛇行型 Mは三宅島 Hは八丈島 背景のカラーは海の深さを示す

黒潮の蛇行と冷水と暖水の渦。偏西風に伴う低気圧・高気圧を参照。

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b.親潮

 海流としての規模は、黒潮と比べて大変に小さい。しかし、栄養塩・プランクトンに富んでいるので、漁業においては大変に重要である(親潮の名の由来)。また、親潮は北海道から東北の気象にも大きな影響を与える。親潮が強いときに北太平洋高気圧から吹き出す風が親潮で冷やされて、冷たい東風(やませ)としてふ吹き、冷害を招くことがある。

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用語と補足説明

地衡流下の図のように海面の高さの違い(100kmの距離に対して1m程度のもの)ができると、海水面の高い方から低い方へと力がはたらく(下図では黒色の矢印)。このとき海水は、圧力勾配(圧力傾度力)の向きに対して北半球では直角右向きに、海水面が低い方を左側に見るように動く(下図では青色の矢印、画面手前から奥に向かって動く)。これは海流の向きに向かって直角右向き(下図では黄色の矢印)にコリオリの力がはたらくので、そのコリオリの力と圧力傾度力がつり合って、安定した海水の流れ(海流)となるのである。

 これは地衡風とまったく同じであり、このような海水の流れを地衡風という。

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海氷海水は塩分を溶かし込んでいるので、凍り始めるのは0℃ではなく、−1.8℃程度である。また真水と違って密度最大の温度も4℃ではなく、-3℃以下になる。真水(湖沼)では水面の水が4℃に冷やされるまでは上下の水が入れ替わる(対流が起こる)が、水面4℃以下になると密度が小さくなるので、対流が止まる。こうして水面がどんどん冷やされて水面から凍り始める。ところが下図を見るとわかるように、25‰(パーミル)よりりも塩分濃度が高いと(海水は35‰程度)、結氷温度になっても密度が高くなるので水面が結氷するまで対流が止まらず、上下の水が入れ替わる。つまり、海水はなかなか凍らないことがわかる。海水が凍るときは、一部の水だけが純粋な氷(固体)になり、残った水(海水)の塩分濃度が増して密度が高くなる。これについてはこちらを参照

 海氷の発達の様子などは流氷情報センターを参照。

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