第7章 火山(5)
目次 | ||
10. | 噴火予知と防災 | |
a. | 噴火の予知と火山情報 | |
b. | 実際の噴火予知 | |
b−1 有珠山 | ||
b−2 岩手山 | ||
b−3 三宅島 | ||
c. | 防災とハザードマップ | |
用語と補足説明 | ||
この章の参考になるサイト |
10. 噴火予知と防災
a. 噴火の予知と火山情報
まず、個々の火山の過去の噴火の歴史を調べて、長期的な展望を立てる。ただし、火山はきちんとした周期で噴火を繰り返すわけではないし、噴火の形式も異なることがあるので注意が必要である。
噴火が迫ってくるということは、マグマが地下から上昇してくるということである。それに伴い起こる火山性地震の地震が頻発するようになったり、震源が地表の方に移動してくる場合もある。また、マグマの上昇に伴い地盤が隆起したり、地割れが生じたりすることもある。噴火前に割れ目などを通じて火山ガスが昇ってくると地熱も上昇する。地磁気や地盤の電気抵抗が変化する(小さくなる)こともある。また、噴出する火山ガスの成分が変化することもある。こうしたことから噴火を予知することが目指されている。
気象庁は日本の活火山111(うち11は「北方領土」)のうち、ふだんからとくに噴火の危険性の高い50の活火山を常時監視しており(2019年5月)、そのうち45の火山については噴火警戒レベルを提供している(2007年12月1日から)。噴火レベルは、噴火予報(レベル1(平常))、火口周辺警報(レベル2(火口周辺規制)、レベル3(入山規制))、噴火警報(レベル4(避難準備)、レベル5(避難))の5段階である。26の火山以外では、レベルではなくたんに、噴火予報、火口周辺警報、噴火予報の3段階となる。
なお、噴火レベルが設定されている45の活火山は下の図のようになっている。
気象庁https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/level_toha/level_toha.htm#level_vol
b. 実際の噴火予知
実際には噴火を正確に予知することは難しい。成功例と、顕著な異常は観測したが噴火に至らなかった例、さらには予想外の展開をしている例を挙げる。
b-1 有珠山
北海道の有珠山は、1910年(明治新山を形成)、1944年〜45年(昭和新山を形成)、1977年とほぼ30数年を周期に噴火を繰り返してきた。しかし予想より10年早く、2000年3月27日から地震活動が活発になり、28日に火山観測情報第1号が出た。すぐに臨時火山情報第1号(噴火の可能性)が続き、翌29日に緊急火山情報第1号(数日以内の噴火の可能性大)、さらに地割れも見られるようになったので、30日には緊急火山情報第2号、さらに31日11時50分に緊急火山情報第3号が出された。そして31日の13時10分、噴火(マグマ水蒸気爆発、のちウルトラブルカノ式(水蒸気爆発))が始まった。噴火は多数の火口から起こり、また地殻変動も続いたが、夏頃には終息に向かい、翌年(2001年)5月28日の噴火予知連で正式な終息宣言が出された。
地元の伊達(だて)市、壮瞥(そうべつ)町、虻田(あぶた)町は、3月29日に避難勧告、同18時30分に避難指示を出した。最終的には6874世帯の15815人が避難した(北海道建設部室蘭土木現業所)。こうして住民の間での人的な被害は避けられた。これは事前に噴火が予知できたこと、もうひとつには、地元に密着した北海道大学有珠火山観測所の情報を、地元住民が信頼していたことがあげられよう。ただ、このときはそれまでの噴火のパターンを踏襲したが、今後もそうだという保証はない。
噴煙を上げる有珠山(左2000年3月31日、右2000年4月7日):北海道新聞 http://www5.hokkaido-np.co.jp/syakai/usu/graph/ |
b−2 岩手山
岩手県の岩手山は、1995年から火山性微動が起き始め、1998年3月には地殻変動も見られ、さらに地震活動が活発になったため火山観測情報が出された。以後、多数の火山観測情報と臨時火山情報が出されている。しかし、今のところ噴火は起きていない。
岩手山:気象庁 http://www.seisvol.kishou.go.jp/sendai/207_Iwatesan/207.htm |
岩手山の火口:日本大学千葉達郎氏 http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/1wate/Iwate.html |
b−3 三宅島
2000年6月26日に群発地震が始まった。気象庁は午後7時33分に緊急火山情報を出した。翌6月27日に三宅島西方海底で噴火が起きた。その後マグマは西北西に移動したようで、神津島で群発地震を起こした(土砂崩壊で1名の犠牲者)。7月8日に三宅島中央火口(雄山)からの噴火も起きたが、それは小規模なものであった。だが、この日から中央火口の陥没が始まったようである。その後、中央火口では陥没に伴う噴火、さらには今日(2004年5月)まで続く火山ガスの放出が始まり、8月には全島民が島外に避難した。現在(2004年5月)段階でも、放出されている火山ガスのため、島民たちが帰島できない状態が続いている。このように三宅島の噴火は、予想も立たない方向で進展している。
(2006年2月18日追記):三宅島は2005年2月1日に、一部地域を除き避難指示が解除され、帰島が始まった。2006年2月時点で帰島した島民は約7割。しかし、若い人の中には帰島しない人も多く、人口の老齢化が進み、また三宅島そのもののガス放出も止まっていない、そうしたなか産業の復興をどうするかという問題が重くのしかかっている。
2000年7月9日の火口、陥没が始まっている。 | 2000年7月22日の火口、カルデラが大きくなっている。 |
アジア航測:http://www.ajiko.co.jp/bousai/miyake/miyake.htm |
c. 防災とハザードマップ
多くの火山では、過去の噴火からそのパターンをある程度予想することが可能である。その予想をもとに火山噴火に伴う災害を軽減させる目的でつくられるのはハザードマップ(火山災害予測図)である。どういう条件の下ではどういう被害が想定されるのか、また避難はどうすればよいのかなどが図示される。現在(2004年5月)、日本では20を越える火山についてこのハザードマップがつくられている。
富士山のハザードマップは、現在作成中である。
岩手山の防災ハザードマップ:国土交通省
http://www.thr.mlit.go.jp/iwate/bousai/sonae/kazan_map/map01.htm
富士山のハザードマップ:内閣府が中心になって作成している。富士山の火山防災対策のページ参照。
富士山ハザードマップ:大規模噴火に対する溶岩の到達時間=各火口での総噴出量は0.7km3、1秒あたりの溶岩噴出量200m3と設定。
http://www.bousai.go.jp/fujisan/h_map/kentou/interim_report/04.pdf
この章の参考となるサイト
火山学者にきいてみよう(日本火山学会):http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/kazan/Question/br/qa-frame.html
フィールド火山学(群馬大学早川由起夫氏):http://www.hayakawayukio.jp/kazan/field/
火山の資料(気象庁):http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/volcano.html