第二部−2− 地球の科学

第7章 火山(3)

目次
7. マグマの発生(1)
8. マグマの上昇
用語と補足説明
この章の参考になるサイト

 

7. マグマの発生(1)

 マグマはマントル上部で発生する。だがマントルは、地震波のS波を通すことことからもわかるように固体である。たしかに地球内部、深くなるほどマントルの温度は上昇するが、岩石を融かすほどの高温にはなっていないということである。深くなるほど圧力も高くなり、圧力が高くなると岩石は融けにくくなるのである。

 また融けるといっても岩石は、水などとは違う。水は0℃より温度が高ければ液体、0℃より温度が低ければ固体であり、0℃のときだけ液体(水)と固体(氷)が同時に存在する。つまり、きちんとした融点(凝固点)を持っている。しかし、岩石はいろいろな鉱物の集合体であり、その鉱物によって融点が違う。また、鉱物の中には特定の融点を持たずに、ある温度になると一部が融け始めるが、全部を融かすためにはもっと温度を上げないといけないものもある。こうして、岩石は一部が融け始める温度と、全部が融け終わる温度との間に数百℃程度の幅があり、その幅の間の温度では固体と液体が同時に存在している。もちろん、融け始めの温度付近では固体の割合が多く、融け終わる温度付近では液体の割合が多くなっている。

 ここで、地球内部(マントル上部)の温度分布と、岩石(マントル)が融け始める・融け終わる温度のグラフを見てみる(下図)。マントルの温度(青線)と、岩石が融け始める温度(下のピンクの線)が接近している深さがある。その深さはだいたい100数十km〜200kmくらいの深さになる。この付近で、何らかの原因で部分的に温度が上がったり、あるいは圧力が下がったりすると、マントルの温度は岩石が融け始める温度を超え、岩石が融け始めることになる。

 地下で圧力が下がるということはイメージしずらいかもしれないが、海嶺の中軸部で下からマントル物質が上昇するとき、温度は急に下がらないが圧力だけが下がることになり、マグマが発生すると考えられている。こうして、海嶺部での大規模なマグマの生成・流出が起こると考えられている。

 しかし、上に書いたように岩石が融け始める温度と融け終わる温度にはかなりの幅がある。つまり、マントルを構成しているかんらん岩がすべて融ければもちろんかんらん岩質のマグマになるのだが、そうではなく、かんらん岩が一部融けて(部分溶融という)マグマになるのである。かんらん岩を部分的に融かしてできるマグマは玄武岩質であることが実験的に確かめられている。そして、この玄武岩質マグマからさまざまな性質のマグマ(さらにそれが冷えてできるさまざまな火成岩)ができることもわかっている。

 だが、日本のような海溝に平行して走っている弧状列島(島弧)は、冷えてしまったプレートが沈み込む場所だと考えれている。なせこのような場所で、マグマが発生するのかについては現在でも完全に答えが出たわけではない。有力な説は、沈み込むプレートの中には海水(水)を含んだ鉱物が含まれていて(圧力が高いほど鉱物は水を取り込みやすくなる)、岩石は水があると劇的に融け始める温度が下がることであろうというものである。また、プレートが沈み込むときに、二次的な流れとしてマントルの上昇流をつくり、マントルの深いところから熱いマントル物質が上昇することによって温度の高い部分がつくられていること、そして、そのために、ある深さまで潜ったプレートがこの高温領域に達するとマグマが発生すると考えられている。絞り出された水が上昇するときに、この高温領域の岩石を融かす働きをするという考えもある。


「大地の躍動を見る」(山下輝夫編、岩波ジュニア新書、2000年10月)、p.137、p.143の図をもとに作成

 さらにそのマグマが上昇する過程、モホ不連続面付近(まわりの岩石の密度が小さくなるのマグマの上昇がいったん止まる?)で地殻下部の岩石も融かして、最初の玄武岩質マグマと混ざることにより、単純な玄武岩質ではない、安山岩質マグマやデイサイト質マグマができるのではないかと思われている。


「マグマダイナミクスと火山噴火」(鍵山恒臣編、朝倉書店、2003年1月)のp.12の図をもとに作成

 もう一つ火山フロントからの距離によるマグマの性質の違い(化学組成の違い)は、マグマの発生する深さによるものだと考えられている。かんらん岩を融かす実験(部分溶融させる実験)をすると、圧力が低いときと比べて圧力が高いときは、同じ玄武岩質のマグマといっても、二酸化ケイ素(SiO2)が少なくなり、ナトリウム(Na)やカリウム(K)といったアルカリ元素が多くなる。これについてはこちらを参照。圧力が高いということは、自然界では深いということである。つまり、火山フロントに近い火山のマグマが発生する深さより、火山フロントから離れた火山のマグマが発生する深さの方が深いということを示唆している。これは、深い地震の震源の分布が、海溝から離れるに従って深くなることと調和的であり、何らかの関係があるだろうということを示している(下図参照)。

プレートの沈み込みが深さ110kmに達したところで、角せん石、緑泥石からの脱水が起き、また深さ170kmで金雲母からの脱水が起き、それぞれの深さでマグマが発生する。このために、海溝側と日本海側の二列の火山列になる。
「地球の中心で何が起こっているのか」(巽好幸、幻冬舎新書)p.118の図をもとに作成。

プレートの沈み込みの角度が小さいと、はっきりとした二重の火山列になるが、プレートの沈み込みの角度が大きいと、火山列が重なってはっきりとした二重の火山列にならない。
「地球の中心で何が起こっているのか」(巽好幸、幻冬舎新書)p.90の図をもとに作成。

 ハワイのような独立した火山群は、マントル深部から高温のマントルが上昇するホットスポット上の火山だと考えれている。この高温のマントルが上昇することによってマグマが発生するのである。

 つまり、地球上でマグマが発生する場所は、おもに海嶺、海溝、ホットスポットの3箇所であることになる。


海嶺と海溝でのマグマの発生
http://www.soc.soton.ac.uk/CHD/classroom@sea/carlsberg/science/oceanic_constr.html
(2008年12月24日現在、リンク先につながりません)

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8.マグマの上昇

 マントル上部で発生したマグマは液体であり、まわりの固体である岩石より密度が小さい。このまわりとの密度の差、つまり浮力で上昇する。液体の中を気体の泡が上昇するように、固体の岩石の中を、ある程度の大きさを持った液体のマグマがそのまま上昇するのである。この上昇するマグマが、人間にとって有用な、だが地球全体ではごくわずかしか含まれていない元素を濃縮することがある。

 もちろん、固体である岩石は液体のように自由に変形できない。だから具体的にはマグマは、マグマだまりの天井を融かしたり、割ったりしながら、上昇することになる。マグマだまり内でマグマは、天井を融かすことによって冷えて下降し、底で固まる(そのとき潜熱を放出)。こうしてマグマだまりの中で対流を起こしながら、全体としてゆっくり上昇する。マグマは上昇する速さは通常10-3m・s-1〜10-8m・s-1程度だと考えられている(「地殻の形成」(岩波地球惑星科学講座8、1997年)。

 しかし、上昇したマグマはマントルよりも密度の小さい地殻内に入ると(モホ不連続面付近で)浮力を失い、そこで停滞する。こうしたマグマはある深さでたまることになり、これがマグマだまりと考えれている。

 マグマだまりの中のマグマから、何らかの原因で溶かし込んでいた火山ガスが発泡すると、マグマの体積が増え、全体として体積が大きく膨張して密度が小さくなり上昇しやすくなる。そして分離した火山ガスの圧力で地表に噴出する。これが噴火である。噴火は他に、マグマだまりに圧力がかかったり、あるいは地下深くからどんどんマグマが供給されることによっても起こると思われている。

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用語と補足説明

岩石の融け始める温度と水マグマの中ではケイ素(Si)−酸素(O)−ケイ素(Si)が二重結合をつくってつながっている。ここに水が加わると、その水が二重結合の間にOHの形で入ることによりこの結合が切られる。そのために分子がより小さくなって融けやすくなるのである。

微量元素の濃縮マグマが上昇するとき、その途中に存在している微量元素を集めることがある。これは例えば、非常に純度の高いシリコン(二酸化ケイ素、ICチップの材料)などを生成する際の使われる帯融解(zone melting)と同じ原理である。

 粗生成したシリコンの棒をつくり、その下端をヒーターで熱して帯状の部分を融かす。こうしてヒーターを上に移動していくと、その途中の不純物がヒータの移動に伴って上に移動する帯状の液体部分の中に集められる。これが上端に来たら(その部分に不純物が濃縮している)、冷やして切り離せばよい。残った部分は非常に純度の高いシリコンになる。99.99999999%(9が10個あるのでテン・ナインという)もの高純度のシリコンはこうしてつくられる。

 ここで、帯状の融けた部分を上昇するマグマだまりと考えれば、その途中の不純物(微量元素)がマグマだまりの中に取り込まれることがわかる。こうして、地球上での平均的な存在比ではごくわずかの微量元素も、火山活動の結果、人間が利用できるほどの濃度に濃縮する場合がある。これが鉱床である。

 地殻はマントルから絞り出されたマグマによってつくられたとすれば、ウランの存在比が地殻上部の花こう岩の方が、マントルのかんらん岩よりも圧倒的に大きいことも説明がつく。イオン半径の大きなウランは固体中よりも、液体中に入りやすいのである。


部分溶解(zone melting)

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ダイヤモンドの上昇ダイヤモンドを含んでいるキンバライト(キンバレー岩)は、かんらん岩によく似た岩石である。このキンバライト(のもととなったマグマ)は、102m・s-1程度の猛烈なスピードで噴き上がってきたと考えられている。ダイヤモンドは、炭素が数千℃の高温、さらには地下200km〜300kmの深さに相当する高圧のもとで結晶になったものである。炭素は通常の温度・圧力のもとでは石墨という結晶になる。だが、通常の温度・圧力のもとにおけるダイヤモンドは、石墨に変わるエネルギー(相転移のエネルギー)が得られないので、ダイヤモンドのままで存在する。しかし、高温のマグマの中のダイヤモンドは、圧力が下がってしまうと、その熱のエネルギーで石墨に変化してしまう。だから、地下200km以上の深いマントルの中でできたダイヤモンドが、地表(近く)で見られるということは、ダイヤモンドを含むマグマ(キンバライトのもとのマグマ)が、その中のダイヤモンドが石墨に変わる時間的余裕がないほど速く、地下から地表に一気に吹き上がってきて、それが急に冷えたということを示している。だから、南アフリカのキンバレー鉱山のようなダイヤモンド鉱山は、大昔の火山の火道を掘っていたことになる。そのあとは現在巨大な穴になっている。

 こうしたキンバライトの噴出は、巨大プルームの上昇に伴って生ずると思われている。キンバライトは日本では見つかっていない。しかしマントル捕獲岩はあるので、そのうち、日本でもダイヤモンドが発見されるかもしれない。

南アフリカのフィンシュ鉱山。円筒形状に掘っていく。

ダイヤモンド百科事典:http://www.on-line-diamond.com/modules/pico/index.php?content_id=22

日本のダイヤモンド2007年9月の日本地質学会で、ダイヤモンドの発見が報告された(水上知行氏ほか)。発見場所は四国の中央市新宮地区、マグマが地層の間に入り込み固まった岩脈中(ランプロファイアーという岩石。ランプロファイアーは火山岩と深成岩の中間の組織をしている半深成岩、マフィック鉱物を多く含み、ダイヤモンドを含むことがあるキンバライトなどにも似ている)のマントル捕獲岩(上昇するマグマに取り込まれたマントル物質)であるかんらん岩中にあった。

 さらに詳しくは、このかんらん岩の中の輝石が成長するときに取り込んだCO2を主成分とする流体包有物があり、その壁に付着する形で、約1μm(1mmの千分の一)の微細なダイヤモンドが見つかったのである。こうした微細なダイヤモンドは顕微鏡観察からではなく、対象物にレーザ光をあて、その散乱を観測することによって見つけることができた。

 これをきっかけに、日本のほかの地域でもダイヤモンドが発見されるかもしれない。もっとも、日本で産するダイヤモンドはあったとしてもμmサイズのもので、宝石となるような大きなものはないだろう。


日本地質学会「日本で初めてのダイヤモンド発見」
http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor//press/2007/Diamond.pdf

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この章の参考となるサイト

火山学者にきいてみよう(日本火山学会):http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/kazan/Question/br/qa-frame.html

フィールド火山学(群馬大学早川由起夫氏):http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/kazan/field/index.html

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