第二部−2− 地球の科学

第1章 地震

3. 震源の分布

目次
a. 世界の地震
付録1 世界の震源分布図をつくる
b. 日本の地震
付録2 東北地方の震源分布の断面図をつくる
用語と補足説明

 

a. 世界の地震

 日本にいると地震はどこでも起きそうだが、そうではない。下図のように、おもに帯状の地域に起こっているのがわかる。これを地震帯という。目につくのは太平洋のまわり(環太平洋地震帯)、それと太平洋、インド洋、大西洋の真ん中、あとちょっと幅が広いが地中海からインドにかけて、さらにこれらと比べると数は少ないがアフリカ東部などに地震が多いことがわかる。

 さらに下の震源の深さ100km以上のものを見ると、非常に限られた地域にしか起きていないことがわかる。地球中で一番深い地震が起こるのはトンガ・ケルマディック諸島付近で、最大700km程度のものも起きている。日本付近でも深い地震が起こるが、せいぜい600kmくらいまでである。ただ、深いといっても地球の半径6400kmとくらべれば、その1/9程度でしかない。

 下の海底地形図で見ると、環太平洋地震帯やインドネシア方面は海溝になっている。この地帯は南米大陸西部をのぞけば、日本列島のような島々(弧状列島、島弧)が存在している。ここは上に書いたように震源の深い地震が起こる場所でもある。

 また、大洋の真ん中には海底の大山脈(中央海嶺、陸上の山脈よりはるかに規模が大きく地球を取り巻いている、下の海底地形図参照)が連なっている。ここをよく見ると(下の中央アメリカの西の海底参照)、中央海嶺の真ん中は溝(中軸谷)になっていて、さらにその中軸谷が所々でギザギザにずれているのがわかる(断裂帯という)。地震はおもに、中軸谷とそれがずれているところで起きている。インド洋では真ん中から北に延びた地震帯が紅海に入り込んでいる。また、さらに一部は向きが反転してアフリカ東部(大地溝帯)に伸びている。

 地震はこうしたところに多く起きている。下のような震源分布図はUSGS(アメリカ地質調査所)の地震データベースと、表計算ソフトのグラフ作成機能を使って自分でつくることもできる。その方法はこちらをクリック

 また、環太平洋や中央海嶺などは火山の多いところでもある。つまり、世界的には地震帯と火山帯はだいたい一致している。ただし、ヒマラヤ付近のように火山のない地震帯もあるし、ハワイみたいに地震帯でなくても火山があるところもある。なお、中央海嶺は海底から数千m盛り上がっているが、なお海面下数千mにあり、海底火山の活動を直接に見ることはできないが、頻繁に溶岩を流していることは深海潜水艇の調査で明らかになっている。火山の分布はこちらを参照

 USGS(アメリカ地質調査所)地震カタログサーチ(Earthquake Catalog Search)のデータ19763回の地震で作成。作成方法はこちらを参照
 USGS(アメリカ地質調査所)地震カタログサーチ(Earthquake Catalog Search)のデータ2831回の地震)で作成。作成方法はこちらを参照
海底地形図:by Bruce C. Heezen and Marie Tharp
http://www.columbia.edu/cu/news/06/08/tharp.html
太平洋の海底地形図:by Bruce C. Heezen and Marie Tharp
https://blog.frontiersin.org/2015/08/22/marie-tharp-1920-2006-cartographer-extraordinaire/#prettyPhoto

 

b.日本の地震

 日本付近の震源の分布は下図の通りである。千島海溝〜日本海溝付近で非常にたくさんの地震が起きている。また、南海トラフ沿い(四国・九州〜沖縄へ)も多い。日本付近で解放される地震のエネルギーは、世界中で起きている地震のエネルギーの約10%にもなる。

 震源の深いものを見ると、海溝側から大陸側に向かって斜めに深くなっていることがわかる。このように、深い地震の震源が海溝側から大陸側に深くなっていることは、日本人の和達清夫が発見したので、和達面、あるいは和達・ベニオフゾーン、または深発地震面という。深発地震面も、USGS(アメリカ地質調査所)の地震データベースと、表計算ソフトのグラフ作成機能を使って自分でつくることもできる。その方法はこちらをクリック

 上で世界的には地震帯と火山帯はほぼ一致していると書いたが、日本という狭い地域で詳しく見てみると地震帯と火山帯は少しずれている。海溝の軸(一番深いところ)−地震帯−火山帯と三者がこの順に平行に走っていることがわかる。

 深発地震面が傾いていることや、海溝の軸-地震帯-火山帯が平行に並ぶことは、日本を含めた弧状列島(島弧)の特徴でもある。火山の項も参照

 なお、日本付近の海底地形図(509KB)はこちらを参照

日本付近で起こる地震の震源の分布:地震調査研究推進本部
http://www.hp1039.jishin.go.jp/eqchr/figures/f2-5.jpg

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


用語と補足説明

弧状列島島弧ともいう。太平洋の西側アリューシャンから日本、フィリピン、ニュージーランド、トンガ・ケルマディック諸島や、インドネシアなど。大洋側に張り出した弧の形をしているものが多い。弧状列島は海溝を伴っている。地震活動・火山活動が活発である。また、大陸との間に縁海が存在してるところも多い。日本海もその一つである。

和達清夫和達清夫(1902年〜1995年)は、初代気象庁長官(1956年)、埼玉大学学長など歴任。和達面を発見したのは1935年のころであるが、当時の日本の科学界はまだ世界的には認められず、後に同じようなことを発見したベニオフの名を冠したベニオフゾーンという名が広まってしまった。しかし最近では、和達-ベニオフゾーンということも多くなってきたようである。

戻る  このページのトップへ  目次へ  home