3 エネルギー問題

 エネルギー資源は、一度消費されると再生されないものが多い。果たして、人類の消費に耐えるだろうか。

3・2 エネルギーの需給見積もり

(1) エネルギー消費量

 世界中ではどのくらいのエネルギーが消費されているのだろうか。世界のエネルギー消費は年2.6%の割合で伸びており、1965年は石油に換算して39億トンだったものが、2008年には113億トンに増えている。この年2.6%という増加率は、倍増期間が27年ということである(計算方法は<1・1 人口>参照)。

 エネルギー消費を地域別にみると、いわゆる先進国が全体では、1965年の69.1%から2008年の48.8%へと、20%以上低下している。これは旧ソ連の崩壊、先進国の小さい人口増加率と省エネ技術の発達、一方、発展途上国の、とくにインドと中国のエネルギー消費量が、経済発展と人口そのものの増加により飛躍的に増えているためである。しかしまだ、世界の人口の20%の先進国の人たちが、エネルギーでは50%を消費していることになる。つまり、一人当たりのエネルギー消費量を考えると、先進国は発展途上国の約4倍ということになる。(値はエネルギー白書2010

 これがいわゆる「南北問題」(北の先進国と南の発展途上国の間の矛盾)である。発展途上国のエネルギー消費量を現在の先進国なみに引き上げるのは無理だろう(とてもそれだけのエネルギーを供給できない)。すわなち、先進国のエネルギー消費量を現在よりも少なくしなければ、南北問題は解決しない。先進国のライフスタイルが問われている。


図3-6 エネルギーの地域別需要の推移 資源エネルギー庁エネルギー白書2010
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010/index.htm

 1人あたりのエネルギー消費量を比べると、アメリカ、カナダが突出していて、ヨーロッパ諸国と日本、さらに経済成長著しい韓国がほぼ同じ水準、また中国、インドの今後の増大が予想される。つまり、中国、インドの1人あたりの消費量が日本と同程度になったら、人口の割合で国全体の消費量が増えることになる(国連推計で2050年に中国は14.8億人、インドは16.6億人と予想されている)。

※ 1人あたりのエネルギー消費量を単純に比べると、カタール、アイスランド、アラブ首長国連邦、バーレーン、トリニダードトバコ、クウェート、ルクセンブルグの順に並ぶ。


世界銀行&google http://www.google.com/publicdata/overview?ds=d5bncppjof8f9_ 国を選択して表示できる。日本語は下のサイト
http://www.google.com/publicdata?ds=wb-wdi&met=eg_use_pcap_kg_oe&idim=country:JPN&dl=ja&hl=ja&q=%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%99%BD%E6%9B%B8

 世界の一次エネルギーの供給の推移(1965年から2008年)を見ると、石油の延びはエネルギー消費全体の延び(年2.6%)とほぼ同じ年平均2.2%で、2008年において全体の34.8%を占める。エネルギー消費全体の伸び率より高いのが、原子力の年平均11.5%、天然ガスの年平均3.6%である。この結果、原子力は全体に占める割合が1965年の0.2%から2006年の5.5%に増加し、同じく天然ガスは15.6%から29.2%に増加している。一方、石炭の年平均の伸び率が1.9%であったので、全体に占める割合が1965年の38.7%から2008年の29.2%へと低下した。(値はエネルギー白書2010

資源エネルギー庁エネルギー白書2010 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010/index.htm


 補足:ヒトとしてのエネルギーと人類としてのエネルギー

 2006年に石油に換算して約106億トンのエネルギーが消費されたとして、当時の世界人口が約65億人だから、一人当たり1.6×103kgを年間で消費したことになる。1日当たりに換算すると4.5kgである。石油のエネルギーは4.2×107J/kgといわれているから、1日だと1.9×108Jである。ヒトが食べ物としてとっているエネルギーは9.2×106J/人・日(1・2の(1)参照)だから、すでにその約20倍のエネルギーを使っていることになる(日本だけに限ると約35倍)。

 

(2) エネルギー資源はあと何年持つか

  政府関係機関の見積もりを下に示す。


2008年の消費量3.1兆m3で割ると可採年数は60.0年。

2007年の生産量で割ると可採年数は121年。

2006年の需要量で割ると可採年数は81.6年。
資源エネルギー庁エネルギー白書2010 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010/index.htm

 ただ、これらの数字はそれほど信頼性が高いものではない。例えば石油は、1930年代からつねに「あと30年(あと40年)」といわれ続けている。石油の埋蔵量については、いわゆる石油メジャーズが一番いいデータを持っていると思われる。彼らにとっては確認可採埋蔵量を低めにいっていおいたほうが、価格の操作をしやすいという面があり、それは否定できない。

 だがたしかに、新しい油田は開発されてきたし、原油の回収率も上がっているので、消費量が増えても、耐用年数(可採年数)にそれほど変化がなかったのだろう。しかし限りがある地球で、石油だけが無尽蔵なはずはない。


図3-7-b 石油の耐用年数(可採年数)の変化:石油情報センター
http://oil-info.ieej.or.jp/static/oil/2-1a.html

※ かつて石油メジャーズは、石油上流部門(原油生産)から下流部門(精製・石油販売)までに至る一貫した事業を全世界的な範囲で展開していたが、1970年代以降、石油上流部門の資産を産油国政府が国有化、またはこれらに資本参加したため、メジャーズは、とくに中東産油国などにおける原油生産にかかわる重要な資産の多くを失った。しかし現在なお、技術力・資本力などの面で国際石油市場をリードしている。

 以前、メジャーズはセブンシスターズと呼ばれ、それはアメリカ系5社(エクソン、モービル、ソーカル、テキサコ、ガルフ)とイギリス・オランダ系のロイヤルダッチシェル、イギリス系BPの計7社のことを指していた。現在(2007年)、エクソンモービル、ロイヤルダッチシェル、BP、シェブロンテキサコ、これに加えてトタル、コノコフィリップスの6社がメジャーズとされる。とくにこの中の、エクソンモービル、ロイヤルダッチシェル、BPをスーパーメジャーズという。ただし、BP社は2010年4月のメキシコ湾での原油流出事故で苦境に陥っているという。

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