モンスーンの世界

モンスーンの世界 安成哲三 中公新書 ISBN978-4-12-102755-9 1,150円 2023年5月

 この本の特徴は、アジアのモンスーンを単独で解説するのではなく、もう少し広い視野、エルニーニョ・ラニーニャ(ENSO)やヒマラヤチベット高原、さらにもっとアフリカや北米、さらには全地球的な視野で、テレコネクションも含めて解説しようとしているところ、地球をシステムとして扱おうとしているところである。

 エルニーニョ・ラニーニャがアジアモンスーン(つまり日本にも)に影響を及ぼしていると同時に、アジアモンスーンもエルニーニョ・ラニーニャに影響を及ぼしている。そればかりか世界中の気象が互いに寛解し合っているという構図。

 もう一つの特徴は、その地球システムの一部として人類社会も組み込もうとしているところである。人類社会の負の景況ばかりではなく、モンスーンでいえば水田が水蒸気の供給に対して重要な役割を果たしているという。

また、例の和辻哲郎の「モンスーン」「砂漠」「牧場」観を、旅行者・留学生の印象という限界と批判的に検討する。

 日本を含めたモンスーンアジアは、水田という極めてSDGs的な農業により、多くの人口を養い、高い生産力と維持してきたし、(第2次大戦後は少し落ちたが)いまでも「世界の工場」(人口・GDPとも世界の約50%)の役割を担っている。その結果二酸化炭素排出量の多い地域にもなっているが、その製品の多くは欧米諸国のためのものなので、欧米諸国は二酸化炭素排出をモンスーンアジアに肩代わりさせているということになる。

 今後については、モンスーンアジアでエネルギー・食料も完結するモンスーンアジア共同体を提唱している。

目次
はじめに
第1章 変化に富む日本の気候 季節変化と地域性
第2章 地球の気候とその辺道の仕組み
第3章 アジアモンスーン 地球気候における重要な役割
第4章 アジアモンスーンと日本の気候
第5章 気候と生物圏により創られてきたモンスーンアジア
第6章 モンスーンアジアの風土
第7章 日本の風土と日本人の自然観の変遷
第8章 モンスーンアジアの近代化とグローバル化
第9章 「人新世」と創り出したモンスーンアジア
終章 モンスーンアジアの未来可能性
おわりに

参考文献

 著者が編者の一人だった「新しい地球学」(名古屋大学出版会)についてはこちら。
https://www.s-yamaga.jp/dokusho/2008/atarashichikyugaku.htm

monsunnosekai-01.jpg (106111 バイト) monsunnosekai-02.jpg (99075 バイト)

 

2023年7月記

戻る  home