フクシマ土壌汚染の10年  

フクシマ土壌汚染の10年 放射性セシウムはどこへ行ったのか 中西友子 NHKブックス ISBN978-4-14-091268-3 1,300円 2021年4月

 あの福島第一原発の重大事故(2011年3月)から10年経った時点でのレポート。原発事故で大量に放出された半減期30年のセシウム137を追う。

 土壌汚染の実態(おもに粘土鉱物に付着する、水中では懸濁する粘土鉱物に付着したままであまり溶けない)、農産物・家畜の吸収と抑制方法、いずれも現段階(2021年段階)では、過剰ともいえる検査でもすべて基準以下になっているのに、福島産ということで、価格が相場の15%安になっているという。

 森林でも、当初葉や幹に付いたものは下に流れ落ち、土壌で固定されてあまり流れ出さないという。つまり、土壌はなかなか放射能が弱くなっていかないという問題がある。付随して、キノコ栽培に使うほだ木が使えなくなっていて、汚染されていないほだ木をどう作っていくかは試行錯誤の段階だという。

 もう一つ食物連鎖による「生物濃縮」も、重金属のような極端なものではない。

 1960年代の大気中核実験でバラまかられたセシウム137はなぜか、大西洋北部と日本の東側で多いという。ただ、その総量は原発事故によるものの1/10程度、それでも現在でもそれが検出される、ということはやはり土壌に固定されている(30年間で1/10程度にしかなっていない)、つまりとくに森林はセシウム137の流出を防ぐという意味もあるという。

 いずれにしても、事故から10年。まだまだ大変な状態だということが分かる。

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2023年4月記

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