皮膚

皮膚、人間のすべてを語る モンティ・ライマン 塩崎香織訳 みすず書房 ISBN978-4-622-090-2-2 3,200円+税 2022年5月

帯での紹介や目次からもわかるように、皮膚の科学ばかりではなく、文化人類学というか社会学というか、あるいはヒトの深層心理の問題というか、さらには哲学にまでにも踏み込んで語る。

筆者はイギリスに本拠を置きつつも、世界のいろいろな国での診療にも当たった経験おある。そこでの風土病的な皮膚病とその社会での患者の扱いにも見識を広げていく。

科学的に見ても、ヒト(生物)の内と外をわける重要な境界。1999年東海村核燃料工場の被曝者で、皮膚の再生ができなくなり、現代医学の粋を集めた治療の甲斐なく亡くなった方もいた。

筆者が繰り返し述べているのは日光を浴びることによる害(もちろん少しは必要)、そしてもう一つは“似非科学”への警告。例えば「もし誰か(あるいは、あなたに何かを買わせようとしている者)が脳と皮膚の関係を絶対的なものとして説明したら、そのときは要注意だ。」など。世界のどこにでも、「きれいになるためなら死んでもいい」という人はいるようだ。

入れ墨や梅毒、さらにはエイズ、ハンセン病などにも言及する。ハンセン氏病の考え方、患者の扱いは古今東西あまり変わらない。

梅毒の項で、「美女(ヴィーナス)と一夜をともにし、水銀(マーキュリー)と一生つきあう。」とある。もちろん誤訳ではないが、ヴィーナス=金星、マーキュリー=水星もかけていると思う。多重の意味を持たせるような日本語にはできないけど

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目次
名称と用語について
プロローグ
第1章 マルチツールのような臓器
    皮膚の構造とはたらき
第2章 皮膚をめぐるサファリ
    ダニやマイクロバイオームについて
第3章 腸感覚
    身体の内と外のかかわり
第4章 光に向かって
    皮膚と太陽をめぐる物語
第5章 老化する皮膚
    しわ、そして死との戦い
第6章 第一の感覚
    触覚のメカニズムと皺
第7章 心理的な皮膚
    心と皮膚が互いに及ぼす影響について
第8章 社会の皮膚
    刻んだ模様の意味
第9章 分け隔てる皮膚
    ソーシャルな臓器の危険な側面 疾病、人種、性別
第10章 魂の皮膚
    皮膚が嗜好に及ぼす影響 宗教、哲学、言語について
謝辞
本書に寄せて(椛嶋健治)
参考文献
用語解説
索引

2022年7月記

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